解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

夫から家事、育児をしないことを理由として離婚調停が申立てられたいってA子さんが相談に見えられました。

A子さんは、これまでにも夫のBさんから、お前の顔を見るのも嫌だから離婚しろ、と言われたことは何度かあったそうですが、まさか離婚調停を申立てるとは思っておらず、かなり動揺していました。

 

夫のBさんは半月ほど前から同じ市内にある実家に戻っており、現在、自宅ではA子さんとその息子さんが暮らしているとのことでした。

 

A子さんは、どちらかといえば細かなことが気にならず、自宅の片付けも気が向いたらまとめてやってしまうタイプでした。

小学生の一人息子の育児についても、息子の自主性を尊重し、学校の宿題や塾の勉強についても、A子さんから口出しすることはあまりありませんでした。

 

一方で夫のBさんは几帳面な性質で、自宅が散らかっているとすぐ不機嫌になり、A子さんに大声をあげて自宅の掃除を命じ、A子さんがすぐに掃除に取りかからないと、テレビのリモコンや新聞を投げつけることもありました。

 

また息子の成績が不振なのは(息子さんの成績はクラスの真ん中くらいでした)母親のA子さんが勉強をしっかりと見ないせいだといってA子さんを責めていました。

 

話を聞く限りでは、A子さんが同意しないとBさんの離婚の請求は認められそうにありませんでした。

しかし、調停の場で自分の考えや思いを調停委員に上手に説明できるのか不安であるということで、当事務所が調停から代理人となりました。

 

まず代理人として行ったのが夫のBさんに対する婚姻費用分担の請求です。

家庭裁判所の実務では、婚姻費用分担の請求は、別居時ではなく請求時から認められることになるため、早めに申立てることが必要となります。

 

夫婦関係調整調停では、夫のBさんが、A子さんが家事や育児を行っていないことが婚姻を継続し難い重大な事由にあたるとして離婚を要求してきました。

 

一方A子さんは、離婚に応じるつもりはないこと、Bさんの主張している理由は法律上の離婚原因にあたらないことを代理人を通じて主張しました。

 

そもそも、家事や育児は妻だけが負担すべきものではなく、当然夫も相応に負担すべきものです。

A子さんが専業主婦であるから家事育児はすべてやれ、それも自分が満足するようにやれ、というBさんの主張は、民法が規定する夫婦の協力義務、扶助義務に反するものです。

 

一方でA子さんは、Bさんと離婚するつもりがないため、Bさんの過ちを指摘するだけでは今後の生活の目途が立たなくなります。

 

そこで、Bさんの主張が誤っていることを指摘したうえで、A子さんにも十分な家事や育児をしてこなかった非があると認め、今後はできるだけBさんと一緒に家事や育児を頑張っていくと主張することにしました。

 

調停当初は、頑なにA子さんとの離婚を主張していたBさんでしたが、別居して冷却期間を置いたことや、多感な年ごろの息子さんのことを考え、最終的には離婚の主張を取り下げることになりました。

 

子どものため、お金のために一方の配偶者だけが何でも我慢するというのは、やがたどこかでひずみがでてきます。

やはり主張すべきは主張し、一方で自らも正すところは正す。

 

こうした解決方法や2人だけだとなかなか大変ですが、調停手続を利用するなど、第三者に間に入ってもらうとスムーズにいくこともあるようです。

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