解決事例
相談者のAさんは10年ほど前に現在の奥さんであるBさんと再婚しました。
Aさんには最初の奥さんとの間にCさんがいます。
一方、Aさんと後妻のBさんとの間には子がいません。
最初の奥さんと離婚した当初、Aさんは毎月Cさんと面会していました。
Cさんが大学生になったころから、AさんとCさんが面会するのは年に数回に減りましたが、それでも定期的に面会をしていました。
Aさんが相談に来られたのは、自分が亡くなった後の自宅の処置についてでした。
自分が亡くなった後、後妻のBさんが安心して自宅で暮らせるようにしたい。
しかし、その後Bさんが亡くなると、自分が残した自宅は、Bさんの相続人のものになってしまう。
Bさんの両親は既に亡くなっていますが、Bさんには3人の兄弟がいます。
Aさんにとってこれまで数度しか会ったことのないBさんの兄弟はいわばあかの他人。
そんなあかの他人に自宅が承継されてしまうのであれば、Bさんが亡くなった後の自宅は、ぜひCさんに相続させたい、というのがAさんの思いでした。
確かにAさんがいうように、後妻のBさんが自宅を相続してしまうと、Bさんが亡くなった時には、そのBさんの相続人が自宅を相続することになります。
Bさんの兄弟が相続することもあれば、その時Bさんが再婚していると、再婚相手が相続する可能性もあります。
Aさんが亡くなった後、後妻のBさんが亡くなるまで安心して自宅で暮らしてもらいたい。
しかし、Bさんが亡くなった後は、自宅はCさんに承継したい。
こうした自分の思いをかなえる方法をぜひ考えてほしいというのがAさんからの依頼でした。
Aさんの思いをかなえる方法として、①自分が亡くなった後自宅はBに相続させる、②Bが亡くなった後自宅はCに相続させる、といった遺言の作成が考えられます。
しかし、遺言が法的効力を持つのは①の部分だけであり、②の部分については単にAさんの希望を書いた「付言事項」という取扱いになってしまいます。
他の方法として、後妻のBさんと、先妻との間の子Cさんが養子縁組をすれば、CさんはBさんの相続人となるため、Bさんが亡くなった後、Cさんが自宅を相続できます。
しかし、この方法にも問題があります。
一つは、養子縁組は当事者の協議で離縁ができてしまうことです。
いま一つは、Bさんが再婚すると、Bさんの相続人は再婚相手とCさんとなり、必ずしも自宅をCさんが相続できる保障がないことです。
こうした様々な問題を検討した結果、最終的には配偶者居住権を活用した遺言を作成することによって、Aさんの問題を解決することにしました。
配偶者居住権とは、今回の相続法改正で創設された、生存配偶者が被相続人の自宅に原則として亡くなるまで居住できるといった権利です。
配偶者居住権はあくまで自宅に居住する権利のため、配偶者居住権の負担が付いた自宅を相続するのは、配偶者以外の者となります。
そこでAさんは遺言を作成し、後妻のBさんに配偶者居住権を、Cさんに配偶者居住権の負担の付いた自宅を、それぞれ相続させることにしました。
Aさんがこうした遺言を作成したことにより、Aさんが亡くなってもBさんは安心して自宅で暮らすことができ、そのBさんが亡くなったあとはCさんが配偶者居住権の負担のない自宅を取得できることになりました。
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