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連れ去られた子に関する監護者の指定
子を連れて出て行った一方の親から、実力で子を連れ去った他方の親や、面会交流時に引き渡された子を返さない親については、裁判所は監護者の指定の際に厳しい判断を下すことが少なくありません。
子の連れ去りという実力行使(「自力救済」といいます。)を是認すれば、結局子を連れ去ったもの勝ちとなってしまい、自力救済を裁判所が後押しすることになってしまうからです。
- 事例1
- 母が子を連れて別居したところ、父から祖父母に子を会わせたいと強く懇願されたため子を引渡したところ、翌日以降父は子を引渡しを拒み、母と会わせなかった事案がありました。
- 母が離婚調停のほか、監護者の指定と子の引渡しを求める調停を申立てたところ、裁判所は、母の監護権を侵害した違法状態を継続している父が、現在の安定を主張することは許されないとして、監護者として母が相当であると判断しました。
(札幌家裁苫小牧支審平成17年3月17日) - 事例2
- 母が子を連れて別居したところ、父が円満調停のほか、子の監護権者の指定及び審判前の保全処分を申立てました。
しかし父は通園バスを待っていた子を祖父母と共に強引に車に乗せて連れ去り、以後母と子を会わせなかった事案がありました。
母が子の監護者指定の審判と審判前の保全処分を申立てました。
裁判所は決定の中で「調停委員等からの事前の警告に反して周到な計画の下におこなれた極めて違法性の高い行為と言わざるを得ず、この実力行為により事件本人に強い衝撃を与え、同人の心に傷をもたらしたものであることは推認するにかたくない」、「監護者を父と定めることは、明らかな違法行為をあたかも追認することになる」と監護者を父と定めた原審を取消し、監護者を母とする決定をしました。
(東京高決平成17年6月28日)
子の引渡しの強制執行
家庭裁判所で子の引渡しを命ずる審判や保全処分が出ても相手が従わない場合は、民事執行法による直接強制を検討することになります。
具体的には、執行官と一緒に相手のところに行って強制的に子を連れてくることになります。
子の引渡しに直接強制が認めれるか否かは、子の年齢が重視され、意思能力が備わる小学校低学年程度の子であれば過去の直接強制を認めた複数の事例があります。
過去の裁判例では、7歳9か月の子に対する強制執行は違法ではないと判断されています。
なお子の連れ戻しにかかる直接強制では、子が自由意思で執行に反対したり、相手が子を抱えて離さないなどした場合は、執行不能として処理されることになります。
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