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個人事業者が破産手続開始決定後に事業を継続するケースとしては、
① 破産管財人が裁判所の許可を受けて事業を継続するケース(破産法36条)
② 個人事業主自身が事業を継続するケース
が考えられます。
もっとも、①破産管財人が事業を継続する場合、事業継続により損失が生じた場合、当該損失は破産財団が負担することになります。
したがって、①破産管財人が事業を継続するケースとは、当該事業を継続しなければ多額の違約金が生じてしまうなど、限定的な事案に限られます。
個人事業主自身が事業を継続する場合の問題点
個人事業主が破産手続開始決定後に事業を継続する場合には、次のような問題が生じます。
事業用財産の破産財団帰属性の判断
破産者が、自由財産(本来的自由財産)を事業用資産として事業を継続することは問題ありません。
しかし、本来的自由財産中、差押禁止財産(破産法34条3項2号・民事執行法131条)については、事業用資産がこれに該当するのか、直ちに判断することは容易ではありません。
事業資産が「その業務に欠くことができない器具その他の物」(民事執行法131条6号)にあたるか否かは、個人事業主の事業の性質や当該動産がどのように事業に用いられているのか等を総合的に判断する必要があるためです。
破産者が利用を希望する事業資産が、差押禁止動産に該当しない場合は、当該事業資産を利用した事業継続は困難となります。
事業資産を売却・賃貸する場合の評価
破産者が、破産財団に属する事業資産を売却・賃貸を受けて事業を継続したい等の希望がある場合、破産管財人は、破産者が提示する売却・仮受価額より高額の条件を提示する希望者の有無を確認する必要があります。
したがって、破産者から買受・仮受の希望が出されても、破産管財人は、他の買受・仮受希望者の有無を確認する必要があるため、直ちに売却等を受けることは困難となります。
また、破産者が仮受けた事業資産が毀損した場合、破産者はもちろん、破産管財人の責任ともなるため、破産者による事業資産の仮受けは、より慎重に判断されることになります。
営業権の評価
個人事業主が破産手続開始決定後に営業を継続する場合、その無形の財産的価値を有する事実関係である営業権は破産財団に帰属します。
営業権の評価についてはDCF法をはじめ、様々な評価方法がありますが、いずれにせよ破産管財人は、破産者より高い評価をする買受希望者がいる場合、当該買受希望者に営業権を売却することになるため、個人事業主が事業を継続することは困難となります。
賃貸借契約の継続
破産者が賃貸物件を利用して事業をしている場合、当該賃貸物件の賃料は、破産手続開始決定後は財団債権となります(破産法147条1項7号)。
破産者からこの賃料相当額について、破産財団に組み入れるとの申し出がある場合がありますが、破産者が継続的に賃料相当の金員の組み入れができるのか、破産管財人において相当慎重に判断されることになります。
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