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有責配偶者からの婚姻費用分担請求

 

婚姻費用分担義務については、婚姻関係の破綻の程度に応じると考え(破綻がすすむと婚姻費用分担義務が小さくなる)、有責性についてはさほど重視しないという考えもあります。

一方、多数の裁判例では、有責性が婚姻費用分担の減額又は免除の事由となることが認められています。

 

民法752条は「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」として、夫婦の同居、協力及び扶助の義務を定めています。

裁判において有責性が考慮されるのは、夫婦の扶助義務に反した配偶者が、自らその義務を怠りながら、他方配偶者に履行を求めることは信義則に反すると考えられるからです。

 

したがって、有責配偶者からの婚姻費用分担請求は、その責任の程度によって、分担請求が全く認められないか、認められても減額されることになります。

他方で有責配偶者が未成熟子を監護している場合、子には責任がないため、子の監護費用相当分については認められます。

 

裁判例1 福岡高宮崎支決平成17年3月15日

 

相手方(妻)がXと不貞関係があり、抗告人(夫)との間でXとの交際を取りやめるとの合意書を交わしたが不貞関係を続け、その後同趣旨の合意書を作成した後、双方から離婚訴訟が提起された事例

 

「相手方は、有責配偶者であり、その相手方が婚姻関係が破綻したものとして抗告人に対して離婚訴訟を提起して離婚を求めることは(略)婚姻共同生活が崩壊し、最早、夫婦間の具体的同居協力扶助の義務が喪失したこと自認することにほかならないのであるから、このような相手方から抗告人に対して、婚姻費用の分担を求めることは、信義則に照らして許されない。」

 

裁判例2 大阪高決平成20年9月18日

抗告人(夫)が相手方(妻)の不貞行為を理由に離婚を決意して家を出たが、相手方は男性とラブホテルに宿泊したことを認める一方で男性との間に不貞行為はなかったと主張した事例

 

「当該別居に至った原因が、専らあるいは主として分担を求める権利者に存する場合には、信義則上、上記義務は(注 生活保持義務のこと)は軽減され、分担額は、権利者が現に監護している未成熟子に係る養育費相当分に止められ、権利者に係る部分まで分担する必要はないものと解するのが相当である。」

「当事者の別居は、抗告人が相手方の不貞を強く疑って家を出たことによるもので、抗告人がそのような疑いを抱いたことについて、それなりの客観的根拠があったものと評価することできる。」

 

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