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婚姻費用分担の終期

 

「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」とされおり(民法760条)、婚姻費用分担の義務は夫婦が婚姻関係にあることで生じます。

もっとも、実際の婚姻費用分担請求は、夫婦が別居している時に問題となります。

 

したがって婚姻費用分担の終期は、別居が円満に解消され同居に戻るか、離婚して婚姻関係が解消されたときに終期となります。

実際の審判で婚姻費用の終期については、「離婚又は別居状態の解消まで」と表現されることが一般的です。

 

別居状態が解消されても婚姻費用分担の終期が到来しない場合

 

妻(申立人、被告)が夫(相手方、原告)に対して婚姻費用の申立を行いました。

裁判所では、「相手方は、申立人に対し、平成20年3月1日から当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまで、毎月末日限り13万円を支払え」との審判が下されました。

 

その後夫は、平成22年10月6日以降自宅に戻り、別居状態が解消されたとして請求異議の訴えを提起しました。

裁判では、「別居状態の解消」という条件が成就したか否か、仮に成就したとしても民法130条※の類推的適用がなされるのかが問題となりました。

 

※民法130条(条件の成就の妨害等)

1項
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

2項
条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる。

 

判決では、平成22年10月6日以降の状況は「当事者の別居状態の解消」という解除条件にあたるとしながらも、

「原告は、被告との婚姻生活を修復するために自宅に戻ったのではなく、自宅で寝泊まりすることが、本件審判の主文2項の「別居状態の解消」という解除条件を充足することになることを認識しながら、あえて、婚姻費用の支払義務を免れるために、自宅に戻ってきたことが認められ、これは、条件の成就によって利益を受ける原告が故意に条件を成就させたものといえる。」

「原告が、婚姻費用減額の調停や審判という手続をとらずに、婚姻費用の支払義務を免れるために、本件審判の主文2項の「別居状態の解消」という解除条件を成就させることは、信義則に反するというべべきである。」

「したがって、民法130条の類推適用によって、被告は、条件不成就とみなすことができるから、本件審判の主文2項に基づく原告の婚姻費用支払義務は消滅しない。

と判示しました。
(名古屋家岡崎支判平成23年10月27日)

 

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