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財産分与における保全処分の活用

 

相手方に財産の分与を請求しても、相手方が自己の名義になっている財産を予め処分したり、あるいは隠匿したりすると、財産分与請求権は絵に描いた餅になってしまいます。

そこで相手方が分与の対象となりえる財産を勝手に処分できないようにするため、保全処分の利用を検討する必要があります。

 

離婚訴訟とは人事に関する訴訟事件です。

人事訴訟法では、その附帯処分として財産分与の申立がができるため(人事訴訟法32条1項)、併せて財産分与請求権を被保全債権とする保全処分の申立ができます。

 

この離婚訴訟に伴う保全処分は、通常の民事保全法に基づく保全処分になります。

(但し、「本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する家庭裁判所が管轄する。」という管轄の特則があります(人事訴訟法30条1項)。)

 

保全処分を申立てるには、被保全権利の存在、すなわち財産分与請求権が認められる蓋然性及び保全の必要性を明らかにする必要があります(民事保全法13条1項)。

立証の程度は疎明(裁判官に一応確からしいという推測を得させるために求められる立証活動)が必要です(同条2項)。

 

財産分与請求権は離婚が前提となるため、財産分与請求権の蓋然性を疎明するためには、離婚事由の存在を疎明することになります。

 

具体的には、裁判上の離婚原因(民法770条 ①配偶者の不貞行為、②配偶者からの悪意の遺棄、③ 配偶者の生死が3年以上不明、④配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由)の存在の蓋然性を債権者の陳述書等で疎明していくことになります。

 

担保の提供

 

債権者は保全処分の申立に際して担保を提供する必要があります(民事保全法14条1項)。

担保の額は裁判官が決定するため、債権者の資力が乏しく十分な担保の準備ができない場合は、個別に裁判官と交渉をする必要があります。

 

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