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事件の経過
①1994年3月 結婚
②2008年12月ころ 妻が勤務先でAと知り合う
③2009年6月以降 妻とAの不貞行為開始
④2010年5月ころ 夫が妻とAの不貞行為を知る
⑤2014年4月 別居開始
⑥2014年11月ころ 夫が離婚調停申立
⑦2015年2月 離婚成立
⑧2015年11月 元夫がAに対して慰謝料支払いを求めて訴え提起
争点
元夫がAに慰謝料請求をした⑧の時点では、④不貞行為を知ってから3年以上、⑦離婚成立から9カ月が経過していました。
慰謝料請求とは、不法行為による損害賠償の請求権であり、損害賠償請求権は「損害」(=不貞行為)と「加害者」(=A)を知ってから3年で時効消滅します(民法724条)。
したがって、元夫の④不貞行為を理由とする慰謝料請求は既に時効で消滅しています。
そこで、離婚自体を理由としてAに対して離婚慰謝料を請求できるのか(こちらは時効消滅していない)問題となりました。
裁判所の判断
1審と2審では元夫も請求を認めてAに対して慰謝料200万円の支払いを求める判決が下されました。
しかし、最高裁では一転して元夫の請求が退けられました。
「夫婦の一方は,他方に対し,その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができる」が、「本件は,夫婦間ではなく,夫婦の一方が,他方と不貞関係にあった第三者に対して,離婚に伴う慰謝料を請求するものである。」
「夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが」、「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。」
したがって、「夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない」
「第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる」
(最判平成31年2月19日 民集第73巻2号187頁)
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