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保険契約者及び被保険者の夫が、保険契約時に保険金受取人を「妻 山田花子(仮名)」と指定した後に離婚し、妻が復氏して「鈴木花子(仮名)」となりました。

その後、夫が保険金受取人を変更しないまま亡くなった場合、鈴木花子は元夫を被保険者とする死亡保険金を受け取ることができるでしょうか。

 

① 夫が自らを被保険者、保険金受取人を「妻 山田花子」と指定して保険契約を締結

② 離婚して妻が復氏して「鈴木花子」となる

③ 元夫が保険金受取人を変更しないまま死亡

 

この場合、保険金受取人の解釈において、「妻 山田花子」の「妻」に重きを置くのであれば、離婚後の鈴木花子は妻ではないため、保険金を受け取ることはできません。

他方、「妻」は「山田花子」という個人を特定するための補助に過ぎないと考えると、受取人は山田花子個人であり、離婚して妻の地位を失い、姓が鈴木に変わっても保険金を受け取ることができます。
この問題と類似の事件については、最高裁の判例があります。

 

少し長くなりますが、最高裁の判例を引用します。

「保険金受取人の指定は保険契約者が保険者を相手方としてする意思表示であるから、これによって保険契約者が何ぴとを保険金受取人として指定したかは、保険契約者の保険者に対する表示を合理的かつ客観的に解釈して定めるべきもの」である。

「保険契約者が契約の締結に際して右のような表示をもって保険金受取人を指定したときは、客観的にみて、右「妻」という表示は、前記のように、単に氏名による保険金受取人の指定におけるその受取人の特定を補助する意味有するに過ぎないと理解するのが合理的であ」る。

「それを超えて、保険契約者が、将来における被保険者と保険金受取人との離婚の可能性に備えて、あらかじめ妻の身分を有する限りにおいてその者を保険金受取人として指定する趣旨を表示したものと解しうるためには、単に氏名のほかにその者が被保険者の妻であることを表示しただけでは足りず、他に右の趣旨を窺知させるに足りる特段の表示がされなければならないと考えるのが相当」である。
(最判昭和58年9月8日民集37巻7号918頁)

 

最高裁は「妻」はあくまで保険金受取人を特定する補助的機能を有するにすぎず、上記の事例あれば、あくまで保険金受取人は「鈴木花子」である。

もし妻の身分を有することを保険金受取人の条件としたいのであれば、その趣旨を窺知(きち)させる特段の表示が必要である、と判示しました。

実務においては、妻の身分を有することを保険金受取人の条件とするような表示は困難です。
そこで、離婚後に元妻(夫)に保険金を受け取らせたくない場合、しっかりと保険金受取人の変更をしておく必要があります。

 

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