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強度の精神病
「精神病」とは、統合失調症、双極性障害(躁うつ病)、偏執病(パラノイア)等を指します。
アルコール依存症、不安障害(パニック障害、恐怖症、強迫性障害、外傷後ストレス障害(PTSD)等)は含まれません。
認知症については、精神障害を伴うものであっても、精神病とは別に分類されています。
次に「強度の」については、夫婦の協力義務を果たせない程度に精神障害がある場合を指します。
過去の判例では、
①
妻が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
②
妻の実家が夫の支出をあてにしなければ療養費に事欠くような資産状態ではない
③
他方、夫は、妻のため十分な療養費を支出できる程に生活に余裕がないにもかかわらず、過去の療養費については、妻の後見人である父との間で分割支払の示談をしてこれに従って全部支払を完了し、将来の療養費についても可能な範囲の支払をなす意思のあることを裁判所の試みた和解において表明し、夫婦間の子をその出生当時から引き続き養育している
以上の事情が認められる事案において770条1項4号による離婚を認めています。
(最判昭和45年11月24日民集24巻12号1943頁)
上記事例は精神病が軽快して退院できても、通常の社会人、主婦として日常生活ができる程度まで回復できる見込みがない場合に770条1項4号による離婚を認めたものです。
他方で、精神病で度々入院していても、その都度日常生活に支障がない程度に回復している場合に同号による離婚を否定した裁判例もあります。
(東京高判昭和47年1月28日判タ276号318頁)
最高裁が同号による離婚を認めた事例では、精神病からの回復状況のみならず、離婚を求める配偶者が相手方配偶者のその後の生活についてもできうる限り配慮しています。
この点について、別の判例では、
「民法は単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもつて直ちに離婚の訴訟を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込のついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない法意であると解すべきである。」
と判示して、離婚後に相手方配偶者の療養や監護に十分な保障がないと離婚を認めないとしています。
(最判昭和33年7月25日民集12巻12号1823頁)
したがって同号による離婚請求が認められるか否かは、
〇精神病の軽快の程度
〇離婚後の配偶者の生活保障
が基準になると考えられます。
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