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婚姻関係の破綻と婚姻費用の分担

 

「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」(民法760条)とされており、夫婦の一方がその分担義務を果たさないときは、他方は婚姻費用の分担請求権を有することになります。

この婚姻費用分担が家庭裁判所の調停や審判で問題となるのは、夫婦が別居しているときです。

 

もっとも別居している夫婦であっても、冷却期間を置くことで後に円満な婚姻関係が回復する可能性がある場合や、婚姻関係が完全に破綻しており、ただ財産分与や親権の問題が解決して離婚するまでの間別居している場合などがあります。

このうち、婚姻関係が破綻している場合、婚姻費用の分担が何らかの影響を受けることがあるのか、っ問題となります。

 

審判・裁判例の紹介

 

審判や裁判では、婚姻関係が破綻している場合に婚姻費用の分担義務が軽減すると判断するものがあります。

 

長崎家審昭和54年6月4日

申立人(妻)が他女との不貞行為が原因で別居した相手方(夫)に婚姻費用の分担を求めた事例

審判は、「婚姻費用分担義務は夫婦の婚姻共同生活を維持する上で必要な費用を分担することを目的とするものであるから、その具体的な分担義務は婚姻共同生活の破綻の程度に応じて軽減されることがあり得るものと解すべきである。」

「申立人及び相手方は、共に将来夫婦共同生活を回復維持する意思が全くなく、その婚姻共同生活は完全に破綻していると認められるから、本来相手方が負担すべき分担額のうち、申立人の生活費に関する部分の5割は、その限度で減少されるべき」としました。

 

東京高決昭和57年12月27日

抗告人(妻)が婚姻費用の分担を求めた事例

決定は、「婚姻費用の分担義務は、本来婚姻継続のための夫婦の協力扶助義務を基礎とするものであるから、婚姻が破綻状態となって夫婦の協力関係を欠くに至り、双方本来あるべき円満な夫婦の協力関係の恢復への意欲がみられなくなっている場合には、その分担額をある程度軽減することも許されるものと解するのが相当である。」

「右の破綻に至ったことについていづれの配偶者に責任があるかの点は、離婚に至った場合にいおいて離婚に伴う慰謝料請求及び財産分与の額を定めるにつきしんしゃくすれば足りる」としました。

 

岡山家玉島出張所審平成4年9月21日

申立人(妻)が相手方(夫)に婚姻費用の分担を求めた事例

審判は、「申立人と相手方は昭和56年6月1日の婚姻以降現在まで約11年間の内、わずか3年半の同居しかなく、しかもここ7年間別居のままで、その間、相手方は重い病気にかかり、入退院を繰り返しているにもかかわらず、かつ、相手方が同居を求めたのに申立人がこれを拒否し、相手方は一般に申立人から妻として協力を全く受けておらず、最も切実に妻の助力を要した時期にもなおこれを受けていない」

「既に夫婦間は回復しがたいまでに破綻している」

「従って、このような場合婚姻費用として子の生活費のかかわる部分のみを義務として課するのが相当であり、申立人の生活費にかかわる部分は認めないこととする。」としました。

 

 

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