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財産分与における債務の取扱い

 

財産分与は、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を、離婚に際して清算するものです。

したがって、婚姻前に夫婦の一方が負った債務については、原則として財産分与の対象として考慮されません。

すなわち、財産分与で問題となる債務とは、婚姻期間中に夫婦の一方ないし双方が負った債務の負担についてだけです。

 

民法は原則として夫婦別財産制を採用しているため(※1)、後で紹介する日常家事債務(※2)に該当しない限り、夫婦の一方が負担した債務については、他方が責任を負うことは原則としてありません。

問題は、どのような債務が夫婦の一方が負担した債務といえるのか、日常家事債務にあたるのかの区別の基準となります。

具体的には、発生原因ごとに債務の取扱いを検討することになります。

 

※1

民法762条1項(夫婦間における財産の帰属)

夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。

※2

民法761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

 

婚姻前の債務を夫婦の一方が婚姻中に返済した場合

 

婚姻前に夫婦の一方が負った債務については、原則として財産分与の問題は生じません。

離婚後も当該一方が債務を返済し、他方が債務を負担することはありません。

 

もっとも、婚姻前の夫婦の一方が負った債務を、婚姻中に他方が返済した場合、その協力を離婚後に清算的財産分与で考慮することができるのか、問題となることがあります。

夫が婚姻の約5か月後に勤務先のお金約230万円を使い込んだため、妻が自らの給料で返済した事例において裁判所は、一切の事情を考慮して、財産分与として返済額の半分である115万円について財産分与を認めました。

(名古屋地判昭和49年10月1日)

 

上記裁判例は婚姻後に生じた夫の債務を妻が返済した事例ですが、夫の債務が婚姻直後に生じたものであるため、婚姻前の債務を婚姻後に返済した場合も、当該返済額が財産分与において考慮される可能性はあると思われます。

 

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