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子の引渡の家事審判

 

子の引渡し請求は、子の監護に関する処分として家庭裁判所に家事審判の申立ができます。
(家事事件手続法別表2の3)

審判を申立てるのは子の住所地を管轄する家庭裁判所です。
(家事事件手続法150条4号)

子の引渡し請求は、家事調停によっても行うことができますが、子を連れ去った相手と円満な話し合いをすることは困難であることから、審判を申立てることが一般的です。

 

子の引渡しに関する審判をする場合、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない、とされています(家事事件手続法68条1項)。

また、子が15歳以上の場合は、子の陳述も聞かなればならないとされています(同法152条2項)。

さらには、子が15歳未満の場合も、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない、とされています(同法65条)。

 

連れ去られた子に関する監護者の指定

 

子を連れて出て行った一方の親から、実力で子を連れ去った他方の親や、面会交流時に引き渡された子を返さない親については、裁判所は監護者の指定の際に厳しい判断を下すことが少なくありません。

子の連れ去りという実力行使(自力救済といいます。)を是認すれば、結局子を連れ去ったもの勝ちとなってしまい、自力救済を裁判所が後押しすることになってしまうからです。

 

事例1

母が子を連れて別居したところ、父から祖父母に子を会わせたいと強く懇願されたため子を引渡したところ、翌日以降父は子を引渡しを拒み、母と会わせなかった事案がありました。

母が離婚調停のほか、監護者の指定と子の引渡しを求める調停を申立てたところ、裁判所は、母の監護権を侵害した違法状態を継続している父が、現在の安定を主張することは許されないとして、監護者として母が相当であると判断しました。

(札幌家裁苫小牧支審平成17年3月17日)

 

事例2

母が子を連れて別居したところ、父が円満調停のほか、子の監護権者の指定及び審判前の保全処分を申立てました。

しかし父は通園バスを待っていた子を祖父母と共に強引に車に乗せて連れ去り、以後母と子を会わせなかった事案がありました。

母が子の監護者指定の審判と審判前の保全処分を申立てました。

裁判所は決定の中で「調停委員等からの事前の警告に反して周到な計画の下におこなれた極めて違法性の高い行為と言わざるを得ず、この実力行為により事件本人に強い衝撃を与え、同人の心に傷をもたらしたものであることは推認するにかたくない」、「監護者を父と定めることは、明らかな違法行為をあたかも追認することになる」と監護者を父と定めた原審を取消し、監護者を母とする決定をしました。

(東京高決平成17年6月28日)

 

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