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(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

Aさんと同居していた父親が亡くなりました。

母親は認知症がすすんで施設に入っていたので、父親は亡くなるまで自宅でAさんと二人で暮らしていました。

相続人は母親と、長男のAさん、次男のBさん、そして三男のCさんの4人です。

 

父親は遺言を残さなかったので、相続人の協議で遺産を分割することになりました。

Aさんは数年前に母親の成年後見人に選任されていましたが、遺産分割では母親と利益が相反するため、改めて親せきを母親の特別代理人として選任してもらいました。

 

父親の葬儀・法要が一通り終わった後、兄弟三人に親せきを交えての遺産分割の話合いがはじまったのですが、父親名義の預金通帳を見たBさんが預金が少なすぎると言い出しました。

父親は三つの金融機関に口座を持っていて、その残高を合わせると1千万円ほど。

 

しかし、Bさんは、父親は会社を辞めるときに相当な退職金を受け取っていたはずなので数千万円は預金が残っているはずだと言うのです。

すると、Cさんまでが預金が少なすぎると言い出し始めました。

 

しかしAさん自身、父親が会社を退職するときに退職金を受け取った話は聞きましたが、その金額が数千万円だとは聞いた覚えはありません。

そうした話をBさん、Cさんにしたところ、Bさんは、父親が務めていた会社は景気が良く、父親が退職する時に受け取った退職金は数千万円を下らないと言い張り、Aさんの話に耳を傾けようとしませんでした。

 

そこで三人で話合い、金融機関で父親の口座の取引履歴を取得して入出金を10年前まで遡って確認しましたが、大きなお金の出入りはありませんでした。

父親が亡くなった時、三人で父親の荷物を整理しましたが、その中からもまとまった現金は見つかっていません。

 

それから数日後、改めて話合いをしようとすると、BさんとCさんが少し言いずらそうに、Aさんの通帳を見せてくれないかと言ってきました。

Aさんは自分が疑われていることに驚き、そして怒りを覚えて二人の申し出を拒みました。

 

その後、二人は親せきと一緒に、Aさんを相手方として遺産分割調停を申立ててきました。

当事務所の弁護士とAさんが出席した最初の期日、BさんCさんは同様の主張を繰り返しました。

 

しかし、父親の預金の有無といった遺産の範囲の問題は遺産分割以前に解決すべき問題です。

父親の預金の取引履歴を調べても異常はなく、そもそも父親が退職金を数千万円受け取ったというのはBさんの憶測にすぎません。

したがって、申立人らが遺産目録に記載された以上の預金の存在を主張するのであれば、一旦調停を取下げ、遺産の範囲を確認する訴訟等を提起すべきです。

 

調停委員も遺産の範囲で争うのであれば、一旦調停を取下げ、別途訴訟で解決すべきと申立人らに伝えてくれました。

調停委員からの話もあってか、申立人らはそれ以降、父親の預金の話を持ち出さなくなりました。

 

遺産の範囲の問題が解決しましたが、次は自宅の相続をめぐって、これを取得したいAさんと、それに反対するBさんCさんの間で話合いが紛糾しました。

結局、最終的には自宅は母が相続し、預貯金を四等分することで調停が成立しました。

 

本件はこうして一応の解決を見ました。

しかし、認知症の母親は既に遺言を作成することができず、次の母親の相続では改めて兄弟三人で遺産分割協議を行うことになります。

今回の相続でこれだけ揉めた兄弟三人、次回の相続で円満な話し合いができるとは到底思えません。

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