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(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

以前に就業規則の改訂について相談を受けていた会社の会長が亡くなりました。

会長とはこの就業規則の改訂がご縁で、遺言作成を依頼され、当事務所を遺言執行者とする遺言公正証書を作成していました。

 

相続人は社長である長男と、その妹である長女の2人。

長女は数年前に離婚してから子と2人で暮らしており、父である会長から生活費の援助を受けながら暮らしていました。

 

会長の相続まで長女とはお会いしたことはありませんでしたが、兄である社長が事あるごとに妹は金遣いが荒いので困っているといった話をされていたのが印象的でした。

 

さて、会長の四十九日が終わった後、社長と妹に連絡をした上で遺言執行業務に着手しました。

相続財産は、自宅の土地と建物、マンションの居室が2つ、経営していた会社の株式、預貯金や有価証券といった金融資産が主だったものでした。

 

自宅の土地建物、マンション一部屋、株式と金融資産の半分を社長に、残りの財産を妹に、というのが遺言の内容だったため、不動産登記や金融資産の名義書換を進めていきました。

 

ある銀行の取引履歴を調査していると、貸金庫の利用料金が引落されていることに気づきました。

銀行に確認すると、会長が利用していたのは会社近くの支店の貸金庫でした。

 

遺言執行者の権限に貸金庫の開扉も含まれていたので、早速社長と妹に連絡をして2人立会いの下、貸金庫の中身を調べてみることにしました。

 

ところが、貸金庫の入室のためのカードキーや鍵がどこを探しても見当たりません。

社長に尋ねても、会長が生前貸金庫を利用していたこと自体知らないということでした。

 

もしやと思い妹に確認すると、会長から頼まれてカードキーと鍵を預かっているという話でした。

そこで予め銀行に連絡をした上で、妹にそれらを持参してもらい、社長、妹立会いの上で貸金庫のを開扉することにしました。

 

当日、銀行の支店で待ち合わせをして、銀行の担当者により貸金庫室に案内してもらいました。

早速中に入り、貸金庫の扉を開いてみると、なんと、中には何も入っていませんでした。

 

これには社長も随分と驚いていました。

しかし、会長が何も入れない貸金庫に高い利用料を支払っていたはずがありません。

 

もし相続開始後に、貸金庫から何かが持ち出されたとすれば、それができたのは鍵を預かっていた妹だけです。会長が鍵を預けるくらいですから、暗証番号も妹に教えていた可能性もあります。

 

そこで単刀直入に妹に貸金庫の中身を持ち出したのか聞いてみました。

妹の説明によると、会長の葬儀が終わった後、鍵を預かっていることを思い出して貸金庫を開けてみたが、中には何も入っていなかったということでした。

 

妹の説明は不自然で、横で話を聞いていた社長も首をかしげていましたが、他方で妹が貸金庫の中身を持ち出した証拠もありません。

貸金庫室の外にはカメラが設置されていましたが、社長の録画映像を確認したいという申出も銀行に断られてしまいました。

 

こうなると貸金庫の中身はもう闇の中。相続人や遺言執行者がその行方を調査することは困難です。

ただ、税務署であれば必要に応じて一定程度の調査を実施してくれる可能性があります。

 

そこで会長の相続税を申告する税理士さん(会社の顧問税理士でした)に相談したところ、申告を担当する税理士さんが当該調査結果を相続税を申告する際の税理士法33条の2第1規定の添付書面に記載しするという話になりました。

 

しかしながらその後も、社長や税理士さん、そして妹からも貸金庫の中身が見つかったという話を聞くことはありませんでした。

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