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相続税の申告期限後に遺留分侵害額調停が成立した場合

 

被相続人:甲(2020年1月1日相続開始)

相続人:甲の後妻乙、先妻との子丙

甲は、全財産を乙に相続させる遺言を作成していた。

 

2020年4月1日  丙から乙に対して遺留分侵害額請求調停申立

2020年10月1日   相続税の申告期限 (相続税法27条1項)

2020年12月1日   遺留分侵害額請求の調停成立

 

上記事例では、相続税の申告期限の時点において、乙が丙に支払う(丙が乙から取得する)遺留分侵害額が確定していません。

 

相続税の申告期限

 

2020年10月1日の相続税の申告期限においては、遺留分侵害額が確定していません。

そこで、乙は、遺留分侵害額請求がないものとして相続税を申告・納付することになります。

 

他方、丙は、甲の相続財産を何ら取得していないため、相続税の申告義務はありません。

 

遺留分侵害額請求調停成立

 

丙は、遺留分侵害額相当の相続財産を取得することになるため、相続税を申告する必要があります。

丙は、期限後申告の特例(相続税法30条)によって、「期限後申告書を提出することができる。」ことになります。

 

なお、期限後申告の特例は、期限後申告書を「提出することができる。」との任意の規定ですが、乙が更正の請求を行った場合、丙が期限後申告書を提出しないと税務署から決定処分を受けてしまいます。

 

したがって、条文上は期限後申告書の提出は任意ですが、乙が更正の請求を行った場合、丙は期限後申告書を提出すべきことになります。
 

乙が更正の請求を行わない場合

 

乙は、甲の配偶者のため、相続税の計算上、配偶者の相続税額軽減の適用を受けることができます。

乙は、相続する財産の価額が1億6,000万円、又は法定相続分いずれか高いところまでは申告をすることにより税負担が生じません。

 

したがって、乙は、丙に遺留分侵害額相当の金銭を支払った場合も更正の請求を行わない可能性があります。

(もともと税負担がないので、更正の請求を行っても還付金がないため)

 

他方、丙については、期限後申告書は「提出することができる。」ものであり、申告義務が課されていません。

 

したがって、乙が更正の請求を行わず、かつ、丙が期限後申告をしない場合、丙は遺留分侵害額相当の金員を無税で取得してしまう可能性があります。

(むろん、税務調査で発覚すれば別です。)

 

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