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被相続人の預金債権は遺産分割の対象になるのか

 

相続開始後の被相続人名義の預金の引き出しについてご紹介したいと思います。

 

相続財産としての預金債権は、2016年12月に最高裁判例が変更されるまで、可分債権として相続開始と同時に相続人が法定相続の割合で相続するとされていました。

 

そのため、預金債権は相続人全員が同意するなどの事情がない限り、遺産分割の対象になりませんでした。

 

なぜなら、預金債権は相続開始時に法定相続分で当然に分割されているので、話合いで分割する必要がないことになるのです。

 

しかし、上記判例変更により、預金債権は遺産分割の対象となることになりました。

そのため、遺産分割が終了するまで(相続人の誰が、どれだけの預金債権を相続するのか決まるまで)相続人が預金を引き出すことはできなくなりました。

 

その結果、遺産分割が終わるまで、被相続人名義の預金は、被相続人にかかった医療費の支払、葬儀費用、相続税納税資金などに使うことができなくなったのです。

 

しかし、さすがにこれでは不便です。

資力がない相続人がいる場合、当該相続人が負担すべき上記費用は、けっきょく他の相続人が肩代わりしなければならないのです。

 

被相続人の預金債権に関する相続法改正

 

今回の相続法改正では、こうした不都合に対応するため、新たな条文が追加されました。

 

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
909条の2
各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額については、単独でその権利を行使することができる。
ここで「法務省令で定める額」とは1口座あたり150万円とされています。
そこで、各相続人は一金融機関あたり150万円を上限として、被相続人の預金を単独で引き出すことができるようになったのです。
もっとも、上記引出限度額では相続税納税資金など、多額の資金需要に対応できない可能性があります。
こうした場合は、家庭裁判所に対して仮分割の仮処分を申立てることが考えられます。
(家事事件手続法200条3項)
この手続きは、「遺産分割の審判又は調停があった場合において」、預金を仮に分割する必要性があり、他の共同相続人の利益を害することがないと認められる場合に、家庭裁判所が預金の仮分割を認めるというものです。
いずれにせよ仮分割の仮処分を利用する場合には相当な時間が必要となるため、早めの準備が必要です。
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