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【労働法実務解説3 労働時間・休日・休暇】

棗一郎:著 宮里邦雄・徳住堅治:監修 2016年 旬報社

 

著者の棗一郎氏は、日本労働弁護団幹事長等を務め、マクドナルド名ばかり店長事件や阪急トラベルサポート事件などで労働者側の代理人を務めた弁護士である。

したがって、本書は労働者の立場から労働基準法等の労働時間、休日、休暇等について解説を加えたものである。

 

弁護士による法律書は、テーマが交通事故にせよ相続にせよ比較的中立的な立場で書かれたものが多い。

交通事故の場合、弁護士は加害者、被害者いずれの代理人を務める可能性があるので、一方に偏った内容の法律書は書きづらい(売れにくい)といった事情がある。

しかし、こと労働問題を扱う法律書の場合、弁護士の立ち位置がはっきりしているものが多い。

 

本書でも棗弁護士は労働者側の立場で、労働者に不利な法制度の問題点を指摘し、使用者側の対応を批判する。

阪急トラベルサポート事件の解説でも、紛争当事者の労働者を6年も苦しめたのは被告会社やその代理人弁護士、さらには法解釈を誤った第一審裁判所の裁判官であるとして、こうした関係当事者は「猛省すべきである。」と熱く語られている。(本書178頁)。

一方、労働問題に関する書籍では、「経営側弁護士による精選労働判例集」などの使用者側に立ったものも数多く書かれている。

多くの労働問題では当然ながら使用者側、労働者側いずれにも言い分があり、それぞれの立場で法文や判例、裁判例を解釈する。

 

したがって同じ労働問題について、使用者側、労働者側それぞれの法律書を読み比べるのは非常に参考になる。

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