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別居時に一方が財産を持ち出している場合
離婚に先立つ別居の際、自宅を出る側が相手方名義の銀行通帳やキャッシュカードなどの夫婦の共有財産を持ち出すことがあります。
実際によくあるのが自宅を出る妻が夫名義の銀行通帳やキャッシュカードを持ち出し、口座から引き出したお金を別居後の生活費に充てるといったケースです。
こうしたケースでは、別居後に一方が費消した預貯金等を含めて財産分与の金額を検討することになります。
実務では、財産分与の基準時は別居時とすることが原則のため、別居時の預金残高を基準として財産分与を行います。
別居時に多額の財産を持ち出した妻が夫に対して財産分与を請求したケースで、裁判所は、夫から妻への財産分与額を2510万円とした上で、妻が既に持ち出した財産中2510万円を超過する1,100万円を妻が夫に支払うように命じました。
(東京高判平成7年4月27日)
夫婦の一方が相手方の承諾なく夫婦の共有財産を持ち出した場合、当該行為が不法行為となるのかが問題となることがあります。
裁判所は、
「婚姻関係が破綻して離婚に至った場合には、その実質的共有関係を清算するために、財産分与が予定されているなどの事実を考慮すると、婚姻関係が悪化して、夫婦の一方が別居決意して家を出る際、夫婦の実質的共有に属する財産の一部を持ち出したとしても、その持ち出した財産が将来の財産分与として考えられる対象、範囲を著しく逸脱するとか、他方を困惑させる等不当な目的をもって持ち出したなどの特段の事情がない限り違法性はなく、不法行為とならないものと解するのが相当である。」
と判示し、不法行為の正立を否定しました。
(東京地判平成4年8月26日)
したがって、夫婦の一方が夫婦の共有財産を持ち出しても、持ち出した財産が財産分与の範囲を著しく逸脱するといった事情が認められない限り不法行為は成立しません。
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