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熟年離婚の増加
2007年(平成19年)、離婚に際して配偶者の厚生年金や共済年金(国民年金は対象外)を分割する年金分割制度が発足しました。
2008年(平成20年)3月までは、分割割合は最大で2分の1で、配偶者の同意や裁判所の決定が必要とされていました。
しかし同年4月以降に納付された年金については、強制的に分割割合が2分の1となりました。
年金分割制度が開始するまでは、専業主婦を続けていた妻が50歳代、60歳代になって離婚しても、厚生年金は全て夫が受取ることになっていたため、経済的な理由で離婚を断念する妻が一定程度いました。
しかし、年金分割制度がスタートしたことによって、妻が専業主婦の場合も、離婚後の経済的生活にある程度の目星が付けやすくなったといわれています。
熟年離婚の注意点① 住居の確保
夫婦が賃貸住宅で暮らしている場合、夫名義の持家で暮らしており持家が財産分与の対象とならない場合は、別居にあたって妻は住居を確保する必要があります。
実家や親せきの家で暮らすことができる場合を除き、賃貸住宅を探すことが一般的です。
しかし、実際には定職のない高齢者が一人暮らしをするにあたり、賃貸住宅を探すことはなかなか大変です。
家主にしてみれば、将来の家賃の支払はもとより、高齢者に介護が必要となり、そのまま賃貸住宅から出て行ってもらえない、といった事態を心配してしまいます。
さらには。高齢者が孤独死、突然死した後、何日も遺体が発見されないと、次の賃貸人を入居させるために特殊清掃が必要となる等、多額の出費が必要となります。
したがって、まず自分が入居することができる部屋を希望の地域で確保できるのか、予め調べておく必要があります。
熟年離婚の注意点② 仕事探し
専業主婦の場合、特有財産としての多額の預貯金があったり、相当な額の財産分与を受けることができる人をのぞいて、離婚後に仕事を探すことになります。
これまで就業の経験がない(あってもわずか)な妻の場合、仕事探しが大変です。
もちろん選ばなければ仕事は見つかりますが、その多くはパートやアルバイトの雇用形態になっているため、将来にわたり安定的に就業できる職場を探すが大変です。
(これは離婚後の専業主婦だけの問題ではなく、いわゆる非正規雇用といわれる雇用形態で働く人すべてにあてはまります。)
熟年離婚の注意点③ 介護
将来介護が必要となった場合、夫婦で暮らしていれば、他方配偶者にある程度介護を頼ることができます。
しかし、離婚して一人暮らしとなってしまうと、介護をお願いできるのは子や子の配偶者、自分の兄弟にお願いすることが多くなります。
しかし、子が遠方で暮らしている場合や、兄弟姉妹も介護が必要な状況になっていると、これら親族を頼ることはできません。
もっとも、この問題については、婚姻を継続していても80歳以上の女性の83%は既に配偶者がおらず、また「老後の同居は幸せな時間を奪う」という上野千鶴子東京大学名誉教授の意見もあるため、何が当人にとっての最適解なのかはケースごとに判断することになります。
熟年離婚の注意点④ 夫の退職金
夫が上場企業の社員や公務員の場合、一定の年齢になると退職金が支給されます。
退職金が支給された後であれば、清算的財産分与に退職金を含めて考えることになります。
しかし、夫が将来受け取るであろう退職金については、その支給の蓋然性等を考慮して財産分与の対象とするか否か、対象とする場合の金額等を協議することになります。
したがって離婚する時期によっては、夫が将来受け取るであろう退職金を財産分与の対象に含めることができないといった問題があります。
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