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退職金の財産分与該当性
退職金が財産分与の対象となるか否かは、退職金の性質によって結論が異なります。
一般的に企業の退職金規定等に基づき支給される退職金は、労働者の賃金の後払的性質を有するとされています。
このように退職金が労働の対価的側面を有している場合は、夫婦の他方に家事労働を始めとする協力により勤務が継続できたからこそ受領することができると考えられます。
したがって、この場合は財産分与の対象となります。
他方で、退職金が労働の後払的側面を有していない場合は、財産分与の対象にならないと判断されることがあります。
離婚後1年を経過して支給された退職金について、勤務先の統廃合という偶発的な理由により支給が決まったものであり、離婚時には退職金の支給の有無が不確定で、支給の趣旨も勤務先の合併による生活補償であった場合に、当該退職金の財産分与該当性を否定した裁判例があります。
(東京家裁八王子支部平成11年5月18日審判)
将来の退職金
将来の退職金については、当事者が中小企業に勤務している場合、①勤務先の就業規則に退職金支給規定等があるのか、②就業規則に規定等がない場合は、慣行として退職金を支給することになっているのか、を予め確認する必要があります。
中小企業の場合、退職金支給規定等がなかったり、業績次第で退職金を支給したりしなかったりする企業が少なくありません。
そこでまず退職金支給規定等の有無、慣行の有無を調査する必要があります。
退職金支給規定等がある場合は、将来支払われる退職金を財産分与でどのように評価するのかが問題となります。
将来における勤務先の倒産、業績不振による賃金切り下げ、それを理由とする事情変更による退職金の減額といった事態の可能性は否定できません。
さらには、当事者のリストラや懲戒(普通)解雇の可能性もあります。
そこで実務では、個々の事情に応じて、将来退職金が支給される蓋然性が高いことを条件に退職金を分与対象財産に含める取扱いとなっています。
将来退職金が支給されるのかについては、どこまでいっても不確定要素が残るため、蓋然性の程度に応じて支給予定の退職金の何割を分与対象財産に含めるのかを協議することにならざるを得ません。
なお、支給時期が10年程度先であっても、公務員等、退職金が支給される蓋然性が極めて高い場合には分与対象財産に退職金が含まれることが多くなります。
企業年金
企業年金は、年金分割の対象に含まれません。
しかし、その原資として退職金等があてられている場合は、退職金の一部又は全部が年金化されたと評価できるため、退職金同様、分与対象財産に含めることになります。
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