解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

会社を経営していた甲さんが亡くなりました。

相続財産は自宅の土地・建物、1000万円ほどの預金、会社の株式と会社に対する貸付金。

 

甲さんは結婚したことがありませんでした。

甲さんは4人兄弟で、上から順番に、長男Aさん、次男Bさん、三男の甲さん、妹の乙さんがいましたが、乙さんは既に亡くなっていました。

 

そのため相続人はAさん、Bさん、乙さんの代襲相続人で甲さんの甥にあたるCさんの3人でした。

Cさんは若いころ甲さんの会社に勤めたこともありましたが、その後現在の会社に転職しました。

 

そうした経緯もあり、甲さんは生前、ゆくゆくはこの会社をCさんに譲りたいと周囲の人に話していたそうです。

 

葬儀・法要にが一通り終わった後、Aさん、Bさん、そしてCさんによる遺産分割協議が始まりました。

3人とも自宅を保有していたため、自宅の土地建物は売却することにしました。

 

問題は甲さんが経営していた会社の株式と2000万円ほどの貸付金。

不動産のように売ってお金に換えるということは簡単にはできません。

 

Aさん、Bさんは高齢ということもあり、会社の株式や貸付金を相続することには消極的でした。

2人はCさんに対して、預金と自宅を売却したお金はきれいに3等分して分けるから、株式と貸付金を相続してくれないかと言ってきました。

 

株式と貸付金を相続していいものか相談したいと言ってCさんは来所されました。

Cさんから相談を受けて、Cさんを通じて会社の決算書等を取り寄せました。

 

内容を確認してみると、会社の業績は低調で、業績を反映した株式の評価はさほど高くありませんでしたが、流動資産が少ないため、Cさんが貸付金を相続しても会社からすぐに2000万円を返してもらうことはできそうにありませんでした。

 

一方で貸付金は「貸付金債権等の元本の価額は、その返済されるべき金額」として評価する必要があるため(財産評価基本通達)、貸付金を相続すると相応の相続税を負担する必要があります。

 

こうした説明をすると、Cさんは貸付金を放棄できないかと言われました。

もちろん貸付金を相続した後に放棄することはできますが、相続開始時に貸付金は存在していた以上、それを相続した人に相続税がかかるのは同じです。

 

仮に亡くなった甲さんが生前、貸付金を放棄(債務免除)しておけば、会社に債務免除益は生じますが、貸付金を相続した人に相続税がかかるといった問題は生じませんでした。

(債務免除には同族株主に対するみなし贈与の問題も生じますが、説明は割愛します)

 

もちろん貸付金だけを相続しないということはできません。

そこで、Cさん、会社の税理士さんと相談した上で、貸付金はCさんが相続し、会社は長期の分割でその返済をすることになりました。

 

Cさんが相続した預金と自宅売却代金の3分の1はほぼ相続税に消えました。

話し合った結果、会社はCさんに対して月に10万円ずつ弁済することになりました。

 

会社がCさんに全額返済を終わるには16年と少しの年月を要する計算になります。

会社の経営は番頭格の従業員が引継ぎ、Cさんは取締役副社長になって会社の経営に関与することになりました。

 

亡くなった甲さんが生前貸付金を処理していれば、もう少し違った解決方法があったと思われる事例でした。

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