解決事例
(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)
養育費の相談に来られたのはA子さん。
A子さんによると、夫のBさんは複数の美容院を経営する美容師兼実業家です。
A子さんはBさんと離婚することになり、私立の小学校に通うC子さんの親権をA子さんが取得し、離婚後は2人で暮らすことになりました。
A子さんが心配しているのは、離婚後にBさんが支払う養育費についてでした。
現在、Bさんの経営する美容院はすべて順調で、Bさんの年収も2,000万円を超えています。
現在の年収を基準に養育費を算定すると、これからもC子さんが私立の小学校に通っても学費等で困ることはなさそうです。
また、Bさんも別れて暮らすC子さんのことを気にかけており、養育費も約束どおりに支払ってくれそうです。
しかし、美容院の経営はいつ、何が起こるか分かりません。
万一、将来Bさんの事業が行き詰まると、養育費の支払が滞る可能性が出てきます。
そこでA子さんは、離婚するときに将来にわたる養育費を一括して受取ることができないかと相談に来られたのです。
そこでBさんの年収をもとにC子さんが20歳になるまでの養育費を計算すると3,500万円を超えることが分かりました。
Bさんがこれだけのお金を一時に支払うことができるのかA子さんに尋ねたところ、預金で十分支払うことができる、とのことでした。
Bさんの資力は問題なさそうですが、養育費を一括で受取ると別の大きな問題が生じます。
それが税金です。
相続税の財産評価基本通達によれば、相続税法21条の3第1項2号で贈与税が非課税となる「生活費」、「教育費」とは、次のとおりです。
「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除く)をいい、治療費、養育費その他これらに準ずるものを含むものとして取り扱うものとする。
(財産評価基本通達21の3-3)
「教育費」とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費に限らないのであるから留意する。
(財産評価基本通達21の3-4)
Bさんが月々支払う養育費は、C子さんの生活費や教育費として税金はかかりません。
一方で、養育費を一括で受取り、それを預貯金した場合については次のような取扱いとなります。
生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合又は株式の購入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱うものとする。
(財産評価基本通達21の3-5)
したがって、養育費を一括で受取り、それを預貯金とした場合、贈与税が課税されます。
日本の贈与税は受贈者課税、それを受取るA子さんに課税され、その額は1,465万円です。
((3500万円―110万円)×55%-400万円)
実に一括で受取る養育費の40%強が贈与税となってしまうのです。
A子さんは、説明を聞いて養育費を一括で受取ることを諦めました。
そもそも今の時代、10年先、20年先の安泰が保障される仕事は稀です。
そこでA子さんには、養育費についての合意を執行認諾文言付の公正証書で作成することをアドバイスしました。
Bさんが再婚して気が変わり、養育費の支払を拒絶しても速やかに強制執行に着手できるようにです。
A子さんはアドバイスを受け入れ、公証役場で離婚公正証書を作成することになりました。
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