解決事例

(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)

 

結婚して20年になる夫のBさんと離婚したいとして相談に来られたA子さん。

お二人の間には高校生を筆頭に3人の男の子がいました。

 

看護師として働いてきたA子さんには一定の収入がありましたが、これからお金がかかる男の子3人の親権者となった場合、果たして食べていけるのか心配されていました。

 

そうしたA子さんの依頼は、財産分与を確実にするため、先にBさんの財産を差押えてくれないか、というものでした。

 

結婚後、別居するまでに築いた財産の半分は、その名義にかかわらずA子さんのものです。

しかし、Bさんが預金を引出した上で隠匿されたりすると、A子さんの財産分与請求権は絵に描いた餅になります。

 

預金の取引履歴を突き付けて預金の行方を尋ねても、生活費に使った等々強弁されると警察でもない限り預金を探し出すことはほぼ不可能です。

 

A子さんから話を聞いてみると、現在家族は賃貸マンションで暮らしており、Bさんと築いた財産は、ほぼ預金だけということでした。

そこで預金債権について仮差押えを検討することになりました。

 

仮差押えとは、財産分与請求権等の金銭債権の債権者による将来の強制執行の実効性を確保するため、債務者が特定の財産を処分することを禁止するものです。

 

仮差押えがなされると、保全に必要な限度で、債務者が当該目的物を処分できなくなり、預金債権の引出し等が暫定的に禁止されるます。

 

裁判所における仮差押え等の民事保全事件の審理対象は、①被保全権利の存在と、②保全の必要性です。

裁判所に仮差押え命令を発令してもらうには、申立がこの2つの要件を満たしていることが必要です。

 

被保全権利とは、仮差押えによって保全される権利のことで、財産分与請求権が存在することが必要となります。

 

保全の必要性は、差押えるべき財産を放置すると強制執行ができなくなるおそれがあるとき、又は、強制執行するのに著しい困難を生じる恐れがあるときに認められます。

 

本件では、まずBさんの債務者の資力等を勘案して保全の必要性の有無が判断されます。

A子さんによると、Bさんはパチンコが大好きで、これまでに結構な金額を浪費したとのことです。

 

そこでBさんに浪費壁があることも申立書に記載しました。

 

なお預金債権等の差押えは、一般的に債務者に与える影響が大きいため、不動産ではなく債権を差押える必要性として、債務者が剰余不動産を有していないことの疎明が必要となります。

 

Bさんは不動産を保有していなかったので、こうした要件も大丈夫でした。

 

仮差押え命令の発令は、債権者が担保金を提供することが必要です。

担保金とは、仮に保全処分が違法・不当であった時に債務者が被るであろう損害を担保するものです。

 

担保金の額については、保全命令の種類、被保全権利の種類及び価額、保全対象物の種類及び価額、疎明の程度、債務者が被ると予想される損害の程度その他諸般の事情を斟酌して、裁判所の自由裁量により決定されます。

 

財産分与請求権を被保全債権とする預金債権の仮差押えでは、一般的に仮差押え目的物の10~15%の担保金が必要だといわれています。

 

本件では、Bさんの浪費癖等を主張したことも功を奏したのか、10%程度の担保金で仮差押え命令の発令を受けることができました。

 

A子さんはこうして財産分与請求権を保全した上で、財産分与等をBさんと交渉しました。

 

結局本件は、A子さんが初めて当事務所に相談に来られてから約半年で、A子さんとBさんは協議離婚することになりました。

 

なお、3人の息子さんは全員A子さんが親権者となり、A子さんと一緒に暮らすことになりました。

オールワンへの
お問い合わせ・ご相談予約