解決事例

(実際の事件の内容の一部を修正して紹介しています)

 

夫Aさんの話によると、妻のBさんとはすでに別居してから10年が経っているとのことでした。

 

10年前、当時フラワーアレンジメントの教室を主宰してたBさんが、教室の運営が軌道に乗って仕事が忙しくなったことを理由に、職場近くに部屋を借りて自宅を出ていったとのことでした。

 

しかし、部屋を借りて自宅を出ていくことについてBさんはAさんに事前に相談せず、自宅を出て行ったあと、Aさんが自宅に帰るように説得してもBさんは仕事を理由にAさんの説得に応じませんでした。

 

Bさんが自宅を出て行ってから間もなく、Aさんは当時知り合いだった女性甲さんと男女の交際を始めるようになり、8年ほど前から甲さんと同棲しています。

 

Aさんはやがて甲さんとの再婚を考え、6年前にBさんに離婚を切り出しました。

しかし、Bさんは離婚に応じることはなく、その後に申し立てた夫婦関係調整調停にもBさんが出頭せず、最終的にAさんは調停を取り下げることになりました。

 

Aさんは、Bさんが先に出て行ったのだから裁判をすれば離婚は認められるはずである、そして甲さんとの同棲もBさんとの婚姻関係が破綻した後だから問題はないはずであると話されました。

 

しかし、いくらBさんから家を出たからといっても、Aさんはその直後から甲さんと男女の関係を開始しているため、甲さんとの交際は婚姻関係破綻後であるとは言えない状況でした。

 

そうすると甲さんと同棲しているAさんは有責配偶者となるため、裁判離婚を争った場合、それが認められるためには厳しい要件をクリアーする必要がありました。

 

最高裁の判例によれば、有責配偶者からの離婚請求が認められるためには、①別居が相当の長期間に及ぶこと、②夫婦間に未成熟の子が存在しないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がないこと、が必要とされています。

 

こうした判例法理を説明したうえでAさんの意向を確認したところ、Bさんには出来るだけのことはするので、Bさんと離婚して同棲している甲さんと再婚したいとのことでした。

 

当事務所では、さっそくAさんの代理人としてBさんと協議をスタートしました。

受任通知を送った後、何度か書面でBさんとやり取りをしましたが、協議離婚に応じてもらえる可能性は低いと判断しました。

 

そこで夫婦関係調整調停を申立て、裁判所の調停委員を通じてBさんの意向を確認しました。

調停委員の話によると、別居が相当長期化しているせいか、Bさんも離婚については応じてもいいような話しぶりでした。

 

しかし、別の女性と同棲しているAさんが離婚を求めることに納得できず、仮に離婚をするのであれば財産分与や慰謝料等、相当額を支払ってもらいたいと考えているようでした。

 

Bさんが離婚に応じてもいいという話を調停委員から聞いたAさん、ここで急に欲が出たのか、以前はBさんにできる限りのことはすると話していたのに、いざとなると財産分与はきっちり半分しか渡さない、慰謝料も数十万円しか払わないと言い出したのです。

 

結局、Aさんの提案をBさんが拒絶し、調停は不成立となってしまいました。

 

そこで改めてAさんと話し合ったところ、Aさんとしても裁判官が提示する財産分与や慰謝料の提案であれば受け入れるということだったので、離婚訴訟を提起し、和解による解決を目指すことにしました。

 

訴訟を提起し、早速裁判官に和解による解決を希望することを伝えました。

裁判官が被告のBさんの意向を確認したところ、Bさんも和解による解決を希望しているとのことでした。

 

そこで弁論準備期日、その後の和解期日で和解内容が詰められ、訴え提起から4カ月で無事に和解による離婚ができました。

 

和解の内容は、Aさんが調停で示していた条件よりAさんにとってかなり厳しいものでしたが、晴れて甲さんと再婚できることになったAさんは満足そうでした。

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