解決事例
(実際の事件の一部を修正してご紹介しています)
父方の祖父が亡くなったAさん。
被相続人が亡くなる前に父が亡くなっていたため、Aさんは父の代襲相続人として遺産分割協議に参加することになりました。
相続人は、伯父のB さん、叔母のCさん、Aさんの兄であるDさん、そしてAさんの4人。
相続財産は被相続人とAさんが暮らしていた自宅の土地建物、銀行預金、有価証券といったもので、相対的に金融資産の割合が高かったため、法定相続分(BさんとCさんが各3分の1、AさんとDさんが各6分の1)でスムーズに分割できるはずでした。
ところが、遺産分割協議が始まると、なんと兄のDさんがAさんの特別受益を主張し始めました。
Aさんは、父が高校生の時に亡くなった後、被相続人に引き取られ、被相続人に面倒を見てもらいながら大学まで出してもらったとのことでした。
一方、兄のDさんは大学を途中で中退し、将来作家になることを夢見て小さな出版会社に営業マンとして就職して働いてきたとのこと。
そのDさんが、Aさんが祖父から受けた生活費や大学の学費に関する支援が特別受益にあたるとして、Aさんの相続分を減らすように主張してきたのです。
AさんとDさんは、Dさんが大学を中退してからほとんど行き来がなく疎遠な状態が続いていました。
Aさんによると、Dさんは作家になろうと色々な懸賞小説に応募などしているようですがこれまで目が出ず、小さな出版社の給料も決して満足いくものではないため日々の生活も大変そうでした。
そうした事情もあってDさんがAさんの特別受益の主張をしてきたのではないか、ということでした。
伯父のBさん、叔母のCさん法定相続分で遺産分割をすすめるようDさんを説得してくれましたが、Dさんは自分の主張を譲ろうとせず、協議は膠着状態となりました。
相続財産は約3億円ほどで、相続税の申告が必要なため、できるだけ早期に遺産分割協議を終える必要があったため、Aさん、Bさん、Cさんが当事務所を代理人として申立を行い、Dさんを相手方として遺産分割調停で解決を図ることにしました。
遺産分割調停にはAさんと当事務所の弁護士が一緒に出席して、
①Aさんが被相続人から受けた一連の援助は通常の扶養の範囲を超えることはなく、したがってAさんには特別受益はないこと、
②他の申立人であるBさん、Cさんも、Aさんに特別受益がないと認めていること、
③本件では相続税の申告期限まで時間が限られており、早期に解決する必要があること、
といった事情を調停委員に説明し、Dさんに法定相続分による遺産分割に応じるよう説得することになりました。
被相続人にはAさんに対する扶養義務があったことなどを分かりやすい主張書面で説明したところ、3回目の期日でDさんからAさんの特別受益については主張を取り下げるとの合意を得ることができました。
これで調停成立かと思われましたが、Dさんは調停委員を通じて、それでも法定相続分での遺産分割には納得できない、との主張がなされました。
納得できない理由を確認しましたが、Dさんから明確な回答はありません。
相続税の申告期限も迫っていたことから、Aさんと相談して、遺産分割協議の範囲外でAさんからDさんに100万円の解決金を支払うことを申し出たところ、最終的にはDさんはこれで納得して、法定相続分での遺産分割に同意しました。
AさんからDさんに支払う100万円は贈与税の基礎控除の範囲内のため、相続税とは別に課税は発生しません。
本来は支払う必要のない100万円でしたが、解決までの時間を短縮するため、Aさんは100万円を支払いました。
調停成立は相続税申告期限の約2か月前でしたが、予め相続財産の評価も終了しており、最終的にはDさんを含めた相続人全員から依頼を受け当事務所が相続税の申告も担当させていただきました。
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