離婚・親権問題
- 離婚するにはどのような手続が必要ですか?
- 相手が離婚に合意しない場合どうすればいいですか?
- 裁判で離婚するにはどのような理由が必要ですか?
協議で離婚をするときの注意点、相手が離婚に応じない場合の対応などについてオールワン法律会計事務所の弁護士が分かりやすく解説します。
離婚手続①協議離婚
離婚と夫婦の同居義務
夫婦の同居義務
夫婦の同居は、夫婦間の本質的な義務といわれています。
同居義務は、婚姻成立とともに発生し、婚姻の解消まで存続します。
「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」(民法752条)。
同居の意味については、単なる場所的な意味ではなく、夫婦として同居することが求められます。
家庭内別居という言葉がありますが、同じ家で暮らしていても夫婦としての実体がなければ同居していることにはなりません。
同居義務は婚姻関係が破綻し、離婚協議中に別居している場合も存続します。
したがって、別居中の妻から夫への建物明渡請求は認められませんし(東京地判昭和47年9月21日)、夫の所有する不動産を妻が使用することを拒むことはできないとされています(東京地判昭和58年10月28日)。
同居を求める調停・審判
家を出てた配偶者に対して、同居を求めて調停や審判を申立てることができます(家事事件手続法39条、244条・別表第二・一)。
過去にも、家を出た妻に対して夫が同居を求める審判を申立てた事例で裁判所は、夫に暴力等の非行はなく、夫は妻の希望を聞き入れて家庭が崩壊しないよいう努力してきており、別居期間も1年程度で(婚姻期間は12年超)長期に及んでおらず、別居の原因は自分本位に振舞ってきた妻にあるとして、妻に同居を命じました。
(東京高決平成9年9月29日)
他方、妻の同居を求めた夫の請求に対して、裁判所は、「同居義務は婚姻費用の分担義務などとは大きく異なり、義務を命じられた者が気持ちを変えて同居に応じる可能性がわずかでもあると認められることが必要であり、同居義務の審判は、同居を拒否する正当な理由があるかどうかを判断するのではなく、同居を拒んでいる夫婦の一方に気持ちを変える可能性がまったくないのであれば、同居を命ずる審判をすることは相当でない」として、当該事案では妻が気持ちを変える可能性はないとして、夫の請求を却下しました。
(札幌家審平成10年11月18日)
同居義務の強制執行の可否
同居義務の履行は、夫婦生活の本質からして、直接強制も間接強制も許されないとされています。
(大判昭和5年9月30日)
したがって、仮に裁判所が同居を命じても、配偶者が同居に応じない場合、配偶者を強制的に家に連れ戻すことはできません。
協議離婚の進め方
協議離婚とは、夫婦間の離婚意思の合致と届出により、婚姻関係を解消するものです。
離婚届には、戸籍法の定める必要事項を記載して、離婚する夫婦及び成年の証人2人が署名・押印して、届出人の本籍地又は住所地の市区町村長に提出し、受理されることで成立します。
未成年者の子がいる場合は、それぞれの子の親権者を父、母一方に定める必要があります。
離婚届は市区町村役場で入手できるほか、インターネットでダウンロードすることもできます。
本籍地以外の市区町村役場に離婚届を提出する場合は、戸籍謄本が必要となります。
また、届出人の本人確認のために免許等の身分証明書の提示が必要となります。
子がいる場合の注意点
子がいる場合は、「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。」とされているため、親権者を決める必要があります(民法819条1項)。
さらに2012年改正・同年施行の民法766条では、協議離婚にあたり、協議で定める「子の監護に関する事項」として面会交流と養育費の分担が明示されました。
民法766条1項
「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。」
この民法改正を受けて、現在の離婚届には「未成年の子がいる場合は,次の□のあてはまるものにしるしをつけてください。」と記載され、面会交流と養育費の分担について、取決めの有無をチェックする欄が設けられています。
離婚公正証書の作成
協議離婚は離婚届けを提出するだけで離婚が成立する手続ですが、一方で注意が必要なこともあります。
最も注意したいのは、離婚した後になって相手が約束した養育費の支払い等の約束を守らなくなることです。
去る者日々に疎し 。
離婚後に相手が再婚して子どもができたりすると、元の配偶者との間の子より、再婚相手やその間にできた子に情が移ることも珍しくありません。
そもそも離婚の時の約束を最初から守るつもりがない人もいます。
準備をしておかないと、相手が約束を守らなくなったとき、権利者は改めて調停の申立てや、訴訟を提起する必要がでてきます。
そこで、協議離婚の際には、合意内容を公正証書で残すようにします。
離婚に際して作成される公正証書を[離婚給付等契約公正証書]といい、次のような事項が記載されます。
① 離婚の合意
② 親権者と監護権者の定め
③ 子の養育費
④ 非監護権者と子の面会交流の取り決め
⑤ 財産分与
⑥ 慰謝料の支払い
⑦ 住所等が変更された場合の通知義務
⑧ 清算条項
⑨ 強制執行認諾文言
特に子の養育費等については、⑨強制執行認諾文言が記載されると、相手が約束を守らなくなった場合に、裁判を経ずに直ちに相手の預貯金や給与債権に強制執行を行うことができるので便利です。
また、協議離婚ではありませんが、あえて調停手続を利用し、合意内容を調停調書にすれば、調停調書は確定判決と同様の効力を有するため、やはりただちに強制執行を行うことができます。
離婚届の偽造
離婚したいのに相手がどうしても離婚に応じてくれないことがあります。
本来であれば協議で離婚できない場合、家庭裁判所の調停手続を利用して話合い、それでもだめなら訴訟を提起する必要があります。
訴訟において裁判所が離婚事由があると認めれば、相手の意向に関わらず離婚することができます。
こうした手続が面倒だといって相手に無断で離婚届を作成して、これを役場に提出するとこれは犯罪になります。
まず、離婚届に相手に無断で相手の名前を署名し、押印することは私文書偽造罪(刑法159条)に該当します。
勝手に作った離婚届を役場に提出すると、偽造私文書等行使罪(刑法161条)と公正証書等原本不実記載罪(同157条)に該当します。
偽造された離婚届が役場に提出された場合の対応
役場の窓口では、提出された離婚届が偽造されたものなのか判断できません。
したがって、形式不備がなければ離婚届はそのまま受理されてしまい、戸籍上は離婚が成立したことになります。
偽造した離婚届の提出は犯罪となるため、警察への告訴を検討することになりますが、戸籍の記載を元に戻す手続は自分で行う必要があります。
まず、家庭裁判所に調停を申立て、離婚無効について話し合います。
この話合いが上手くいかない場合、離婚無効の確認訴訟を裁判所に提起して、裁判所に離婚の無効を確認してもらう必要があります。
離婚の向こうが確認されれば、役所に戸籍訂正の申し出を行います。
不受理申出の利用
偽造された離婚届が一旦提出されると、戸籍の訂正には大変な手間と時間が必要です。
そこで勝手に離婚届を提出されないようにするに、予め役場に「離婚届の不受理申出書」を提出しておきます。
不受理申出とは、届出によって効力が生じるものについて、自己を届出事件の本人とする届出がされても、自らが窓口に出頭して届け出たことを確認することができない限り、届出を受理しないように申出をすることができる制度です。
不受理申出の対象となる届出は次のとおりです。
➀ 婚姻届
➁ 離婚届
➂ 養子縁組届
提出先の役場には限定はありませんが、本籍地以外の役場に提出すると、本籍地の役場に連絡が届くまでにタイムラグが生じます。
したがって、不受理申出書の提出は本籍地の役場に提出しておきます。
中国人同士の協議離婚
適用される法令
外国人(中国人)同士の離婚について、どの国の法令が適用されるかについては、法の適用に関する通則法(以下、「通則法」)に規定があります。
通則法25条によれば、婚姻の効力は、夫婦の本国法が同一であるときはその法により、その法がない場合において夫婦の常居所地法が同一であるときはその法により、そのいずれの法もないときは夫婦に最も密接な関係がある地の法による。」とされ、同法が離婚にも適用されます(同法27条)。
外国人(中国人)同士の離婚では、夫婦共通の本国法である中国法が適用されます。
中国における離婚手続きには、婚姻登記機関での協議離婚、調停離婚(訴訟内、訴訟外での調停)、裁判離婚があります。
日本での離婚の中国での効力
中国人同士が日本で婚姻の届出をしている場合、日本において有効に婚姻が成立しています。
この場合、中国でも協議離婚が認められているため、離婚届を提出すれば協議離婚することができます。
もっとも、中国人同士が中国で婚姻登記をしている場合、中国において日本における協議離婚の効力が認められるのか問題となります。
中国では、中国以外での離婚の効力を承認する場合を「離婚裁判」と「離婚調解書」としており、この離婚調解書には日本の家庭裁判所における調停調書が含まれます。
したがって、日本で裁判離婚や調停離婚が成立している場合は、当事者は人民法院で離婚の承認を求めることができます。
他方、協議離婚は承認の対象に含まれていないため、中国で協議離婚の効力を認められるためには、当事者双方が離婚登記機関で協議離婚を行う必要があります。
離婚で悩まれている方に対して、現状で離婚が可能かどうかや、離婚に向けてこれから必要な準備について弁護士が相談をお受けします。
もちろん、離婚したい気持ちや、離婚の理由があるからといって、実際に離婚すべきかどうかは、離婚後の生活のことや、お子さまのこと等……さまざまなことを考えて決断する必要がありますので、具体的な事情をお聞きし、場合によっては離婚しないほうがよいというアドバイスをすることもあります。
自分の場合はどうなるのかな?
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