遺言・相続・遺産分割

遺言作成のメリットと作成方法

  1. せっかく書いた遺言書が法的に無効とされる場合があることをご存知ですか?

自分の死後、相続財産をめぐって家族が争いを起こさないためにきちんと相続財産の分け方を記しておくことが重要です。「遺言とはどういうものなのか?」や、遺言を作成するポイントについて、オールワン法律会計事務所の弁護士が解説します。

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遺言書について

人が生きている時には、その所有する財産を他人に売ったり、場合によってはタダであげたりすることができます。そうであれば、元気な時に自分が亡くなった後、その所有する財産の処分等について意思を表示しておけば、その人が死んだ後もその意思表示は尊重されることになります。

遺言書とは、人が死んだ後、相続財産の処分などについて法律上の効果を生じさせる 目的で作成しておく文書のことです。

このように、遺言書に相続財産の処分(誰に何を残すのか等)などの遺言者の意思表示が書かれていると、その意思表示は最大限尊重されることになります。

一方、遺言書にこのような効力が生じるのは、遺言者が亡くなった後のため、その時になって本当に遺言者に意思を表示する気持ちがあったのか、確認することはできません。
そこで、遺言書の作成には厳格なルールが法律で定められています。

こうしたルールに従わないで書かれた遺言書は、場合によっては無効になることもあります。

「遺言書」と「遺書」は
全く別のものなんです…

遺言の種類

民法上の遺言は、普通方式遺言と特別方式遺言の2つに分かれます。

普通方式遺言

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

特別方式遺言

  • 隔絶地遺言
  • 危急時遺言

※もっとも、遺言書を作成する方の99%以上が自筆証書遺言、公正証書遺言いずれかを選ぶといわれています。

自筆証書遺言の作成

《自筆証書遺言の方式》

自筆証書遺言は、相続財産の全部又は一部の目録を除いて、遺言全文、日付、氏名を自書し、押印することで作成します(民法968条)。

【遺言書文例】

第1条

遺言者は、遺言者の有する次の財産を妻A(昭和〇年〇月〇日生)【※1】に相続させる【※2】。

1 不動産【※3】

①土地【※4】
所  在  〇〇市〇〇町〇丁目
地  番  〇番〇号
地  目  宅地
地  積  〇〇.〇〇㎡

②建物【※5】
所  在  〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇
家屋番号  〇〇番
種  類  居宅
構  造  木造かわらぶき2階建
床 面 積  1階 ○○.〇〇㎡
2階 〇〇.〇〇㎡

2 預貯金

①預金債権【※6】
〇〇銀行〇〇支店扱い 普通預金
口座番号 〇〇〇〇〇〇

②貯金債権【※7】
ア 通常貯金
記号 〇〇〇〇
番号 〇〇〇〇
イ 通常貯蓄貯金
記号 〇〇〇〇
番号 〇〇〇〇

第2条

遺言者は、前記 妻Aが遺言者と同時に又は遺言者より以前に死亡したときは、前条により前記 妻Aに相続させるとした財産は、全て遺言者の長男B(昭和〇〇年〇月〇日)に相続させる【※8】。

第3条

遺言者は、遺言者の有する次の財産を前記 長男Bに相続させる。

1 区分建物【※9】
(一棟の建物の表示)
所   在  〇〇市〇〇町〇丁目〇番地○○
建物の名称  〇〇
(専有部分の建物の表示)
家屋番号  〇〇番〇
建物の名称  〇〇号
種   類  居宅
構   造  鉄骨鉄筋コンクリート造1階建
床面積  〇階部分 〇〇.〇〇㎡

令和〇年〇月〇日【※10】
遺言者 山 田 太 郎 ○印

(付言事項)

【※1】

相続させようとする者や受遺者の表示については、氏名、遺言者との続柄、生年月日、住所等で特定します。
推定相続人ついては通常、住所の記載までは必要なく、血縁の薄い受遺者等について住所まで記載します。

【※2】

民法改正により2019年1月13日以降、財産目録は自書が不要となりました。
財産目録については、パソコンで作成したものや、不動産の登記事項証明書、預貯金の通帳のコピーを添付することが認められます。
なお、パソコン等で作成した財産目録には、毎ページごとに(両面であれば両面に)遺言者の署名と押印が必要となります。

【※3】

「相続させる」遺言については、当該遺産を当該相続人に単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきで、何らの行為も要せず、被相続人の死亡の時に当該遺産が遺産分割の協議、審判を経ることなく当該相続人に相続により承継されます(最判平成3年4月19日)。
したがって、不動産の場合、当該相続人が単独で相続の登記申請をすることができます。
一方、「遺贈する」遺言については、一般承継である「相続させる」とは異なり、特定承継であるとされています。
したがって、不動産の場合、登記義務者である他の相続人と共同して登記申請をする必要があります。

【※4】

不動産(土地)の特定は、所在、地番、地目、地積の記載により行います。

【※5】

不動産(建物)の特定は、所在、家屋番号、種類、構造、床面積の記載により行います。

【※6】

預金債権の特定は、銀行名、支店名、口座の種類、口座番号により行います。

【※7】

貯金債権の特定は、通帳貯金、通常貯蓄貯金ごとに記号、番号により行います。

【※8】

遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは効力が生じません(民法994条1項)。
相続させる遺言についても、相続開始以前に相続させようとする者が死亡したときは当該相続させようとする者に関する部分の遺言は効力を失います。
そこで年の近い夫婦で遺言をする場合など、相続させようとする者が遺言者と同時又は先に死亡する事態に備えて予備的文言を付け加えます。

【※9】

上記の事例は敷地権の登記がない区分建物の文例です。
この場合、(一棟の建物の表示)として所在、建物の名称、(専有部分の建物の表示)として家屋番号、建物の名称、種類、構造、床面積により特定します。
なお、敷地権の登記がある場合、上記事項に加えて、(敷地権の目的たる土地の表示)として土地の符号、所在及び地番、地目、地積、(敷地の表示)として土地の符号、敷地権の種類、敷地権の割合により特定します。

【※10】

日付の自書が要求されるのは、①遺言作成時の遺言者の遺言能力の有無を判断し、②内容の抵触する複数の遺言の前後を確定するためです。
なお、前の遺言と後の遺言の内容が抵触する場合、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1031条)。

公正証書遺言の作成

《公正証書遺言を作成するメリット》

1. 正確な遺言を作成できる

公正証書遺言は、第三者で法務大臣が任命した公証人が作成します。

公証人とは、原則として、判事や検事などを長く務めた法律実務の経験豊かな者で、公募に応じた者の中から、法務大臣が任命することになっています(公証人法13条)。

法律の専門家である公証人が遺言作成に関与することで正確な遺言書が作成できます。

2. 遺言書の紛失、隠匿、偽造、変造を防ぐことができる

公正証書遺言は、その原本を公証人役場で保管します。

そのため、遺言書を紛失したり、隠匿されたり、偽造、変造されることを防ぐことができます。

3. 家庭裁判所の検認手続が不要

公正証書遺言の場合、相続開始後の家庭裁判所の検認手続が不要となります(民法1004条2項)。

自筆証書遺言等では検認手続を経てから遺言が執行されるため、遺言執行に着手するまでに一定程度時間を要します。

他方、公正証書遺言は検認手続が不要で、遺言書の正本(公正証書遺言作成時に公証人から交付してもらえる)で遺言執行ができるためスムーズな遺言執行が期待できます。

(なお、2020年7月10日より施行される「法務局における遺言書の保管等に関する法律」によれば、遺言書保管官の外形審査を経て遺言書保管所で保管・管理する自筆証書遺言についても家庭裁判所の検認手続は不要となります。)

 

《公正証書遺言の方式(民法969条)》

① 証人2人が立ち会います。

② 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授します。

③ 公証人が遺言者の口授を筆記し、遺言者・証人に読み聞かせ又は閲覧させます。

④ 遺言者・証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名して押印します。ただし、遺言者が筆記できないときは、公証人がその事由を付記して署名に代えることができます。

⑤ 公証人が、その証書が以上の方式に従って作成されたものであることを付記してこれに署名して押印します。

 

《公正証書遺言の作成手続》

公正証書遺言を作成するために公証人から準備するように指示される一般的な書類は次のものです。

① 遺言者の実印と印鑑登録証明書(本人確認のためです)

② 証人の住民票の写し

③ 相続人の戸籍謄本、受遺者の住民票の写し

④ 遺言執行者の住民票の写し

⑤ 遺言の対象である財産に関する資料(不動産の全部事項証明書、預貯金通帳など)

準備する書類はケースによって異なるので、詳しくは作成を依頼する公証人、公証人役場に確認してください。

《公正証書遺言の作成手数料》

遺言の目的である財産の価額に対応する形で、その手数料が定められています。

 目的の価額  (手数料)
・100万円以下 (5000円)
・100万円超200万円以下 (7000円)
・200万円超500万円以下 (1万1000円)
・500万円超1000万円以下 (1万7000円)
・1000万円超3000万円以下 2万3000円)
・3000万円超5000万円以下 2万9000円)
・5000万円超1億円以下4万3000円)
・1億円超3億円以下 4万3000円に超過額5000万円ごとに1万3000円を加算)
・3億円超10億円以下 9万5000円に超過額5000万円ごとに1万1000円を加算
・10億円超(24万9000円に超過額5000万円ごとに8000円を加算)

 

※注意点※

① 財産の相続又は遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出して、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該遺言書全体の手数料を算出します。

② 全体の財産が1億円以下のときは、算出された手数料額に、1万1000円が加算されます。

③ 公証人が遺言者の自宅や入院先を訪問して公正証書を作成する場合、手数料が50%加算されるほか、公証人の日当、交通費が必要となります。

秘密証書遺言の作成

《秘密証書遺言の方式(民法970条)》

① 遺言者が、遺言書に署名して押印します。

② 遺言者が、遺言書を封書に封入し、遺言書に用いた印章を使って封印します。

③ 遺言者が、公証人1人、証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書であることと、住所、氏名を申述します。

④公証人が、その証書を提出した日付及び遺言書の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、押印します。

 

《秘密証書遺言のメリット》

1. 自書不要

秘密証書遺言の作成には特別な方式が求められていません。
遺言者の署名と押印があれば遺言自体は代書、パソコンでの作成したもので大丈夫です。

2. 遺言作成者の労力が少ない

遺言作成者が公証人及び証人の前で行うことが求められているのは、

①当該遺言が自己の遺言であること、氏名及び住所を申し述べること、

②公証人が作成した封紙に署名、押印すること、だけです。

公正証書遺言のように遺言の趣旨を全て公証人に口授したり(※1)、自筆証書遺言のように遺言全文を自書する必要がありません(※2)。

したがって、遺言の全内容を公証人に説明できない場合や、遺言全文を自書できない場合も秘密証書遺言であれば作成できる可能性があります。

※1
公証人によっては、遺言作成の際、予め作成した遺言書の下書きを読み上げ、遺言者には確認を求めるだけで公正証書遺言を作成してくれる場合もあります。

※2
民法の改正により、自筆証書遺言の財産目録は自書が不要となりました(民法968条2項)。

遺言を作成するメリット


遺産分割協議が省略できる

遺言書には、遺言作成者が遺された家族(相続人)や大事な人のことを考えて決めた遺産分割の結論が書いてあります。したがって、遺言書の中にどの相続財産を誰に残すのかの指定がある場合、相続人で改めて遺産分割協議を行う必要がありません。


相続財産を探し出す手間を省略できる

被相続人が生前、相続人と別に暮らしていると、相続開始後、相続人が相続財産の所在やその内容を把握するために大変な手間と時間が必要となり、相続税の申告期限に間に合わなくなるおそれがあります。他方で遺言書が遺されている場合、その中に相続財産の所在や内容が明らかにされていますので、相続財産探しに時間を取られずに済みます。


法定相続人以外に対する遺贈ができる

遺言作成者は、法定相続人の遺留分に配慮すれば、遺言により法定相続人以外の人に相続財産を遺すことができます。

かわいい孫、介護で世話になっている息子の嫁。

遺言書を作成することで、こうした法定相続人以外の人に相続財産を残すことができます。


相続手続をスムーズに行うことができる

遺産分割協議による場合、被相続人(故人)名義の預貯金の名義書換・払戻、相続不動産の登記名義の変更には原則として相続人全員がその手続きに関与する必要があります。また、さまざまな書類に相続人全員が実印を押印したり、印鑑登録証明書を収集したりするなど、大変な手間がかかります。一方、遺言書があり、その中に遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が相続人全員を代表してさまざまな相続手続きを進めることができます。


遺言者の想いを伝えることができる

遺言には相続分の指定といった法定遺言事項の他に、遺言者がどのような思いで遺言書を作成したのか、今後家族にどうあって欲しいのかといった希望を言葉で加えることができます。こうした「遺言者の思い」を付け加える言葉のことを付言(ふげん)といいます。

弁護士としてさまざまな遺産分割をお手伝いする中で、「遺言者の思い」が遺されておらず、単に「相続財産」だけが遺されているケースに出会うことがあります。こうしたケースでは、多くの相続人に「被相続人の思い」が何であったのかという「迷い」が生じるようです。相続人にいったん「迷い」が生じると、それはやがて「欲」に変わります。そのあとに待っているのは文字通り「争族」です。

他方で、「遺言者の思い」がしっかり相続人に伝わると、結果として遺言書の中で他の相続人より相続分が少なく指定されている相続人も、遺言者の思いを汲んで遺言書の内容を受け入れることが多いようです。

「付言」の一例

遺言者である私山田太郎は、妻花子、長男一郎、次男次郎の理解もあり平穏に暮らしてきました。しかし、高齢になり、私亡きあとの相続を真剣に考えた結果、家族の今後を考えて遺言を残すことにしました。
遺言の内容は、一郎に、次郎より多くの相続財産を相続させるものとなっています。
これは、一郎が、嫁の京子さんと一緒に、お母さんと同居して、山田家を守っていくには、相応の出費もあるため、そのことを考えてのことです。私は、一郎と同じように次郎を大切に思っています。どうか、お父さんの心情を理解して、これからも、お母さんとお兄さんを助けてあげて下さい。そして、今後も家族で助け合って、皆が充実した人生を送ることを私は心から願っています。


遺産分割基準が変更できる

遺言がない場合、遺産分割の基準は、民法の法定相続分が目安となります。したがって、不動産や自社株式のように相続人が平等に相続することが困難な相続財産がある場合、遺産分割協議が難航することもあります。遺言を作成する場合、遺留分を有する相続人に対して、遺留分相当の相続財産を残すようにすれば、残りは遺言作成者が誰に相続・遺贈させるのか自由に決めることができます。

例えば相続財産として親が暮らしていた4,000万円の自宅、2,000万円の預貯金が残されたとします。

どのような遺言書を作成したらいいのか、遺言書をどう書いたらいいのか、ご不明な点は弁護士法人オールワン法律会計事務所の弁護士にお気軽にお尋ねください。

遺言書を作成する際のポイント

①遺留分への配慮

兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分という最低限の相続分が法律上保障されています。
特定の相続人の遺留分を侵害する遺言では、遺留分を侵害された相続人が、遺留分を侵害した他の相続人・受遺者に対して遺留分の減殺を請求する事態にもなりえます。
こうした「争族」を避けるためにも、遺言作成時には推定相続人の遺留分に配慮する必要があります。

②遺言執行者の指定

遺言作成者に代わって遺言事項を実現するため、遺言執行者を遺言で指定しておくことが有用です。
遺言執行者は遺言の執行に必要な一切の行為をすることができ、相続人もこれを妨げることはできません。遺言執行者は、相続人の中から指定することも、第三者の弁護士を指定することも可能です。
第三者の弁護士を指定する場合はもちろん、相続人を遺言執行者に指定する場合も、その後のトラブルを避けるため、その旨を相続人にあらかじめ伝えておく方が無難です。

遺言書にはさまざまな決まりがあります。
せっかく書いた遺言が無効となったせいで相続人が遺産分割に時間をとられてしまう事態が生じないよう、遺言作成は慎重に行う必要があります。
確実な遺言書を書きたいという方、遺言書をどう書いてよいか迷っておられる方は、オールワン法律会計事務所の弁護士にご相談ください。専門家である弁護士が、あなたに最適な遺言書の書き方をご提案いたします。

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