借金問題(債務整理)

  1. カードローンの返済ができない……
  2. 友人の連帯保証人になってしまい債権者から請求がきている……

自己破産をはじめとする債務整理について誤った情報が流布していることから、多重債務状態から抜け出せずにいる方が多くいらっしゃいます。
借金(債務整理)にまつわる法律問題について、オールワン法律会計事務所の弁護士が詳しく解説します。

借金問題についての
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倒産処理手続の種類

裁判所が関与する手続

清算型

債務者の資産を処分換価して債権者に平等に配当することを目的とする手続

破産手続

支払不能又は債務超過にある債務者の財産を清算し、総債権者の比例的平等的満足を図る手続

特別清算

清算株式会社の清算の遂行に著しい支障をきすべき事情又は債務超過の疑いがある場合に、債権者等の利害関係人からの申立てにより、裁判所の監督の下で行われる清算手続

再建型

債務者の事業又は経済生活を再建し、再建された事業等から生じる収益・収入を債権者の弁済の原資とする手続

民事再生

経済的に行き詰った債務者が、裁判所の関与のもと、債務者が作成し、多数の利害関係人が同意した再生計画を遂行することで経済的再建を目指す手続

会社更生

経済的に行き詰った株式会社が、裁判所の関与のもと、更生管財人が作成し、多数の利害関係人が同意した更生計画を遂行することで経済的再建を目指す手続

特定調停

債務の返済ができなくなるおそれのある債務者(個人、法人を問いません)の経済的再生を図るため,債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を行うことを目的とする手続。
債務者本人が相手方(債権者)の住所等を管轄する簡易裁判所に申立を行い、調停委員が、債務者と債権者の利益を調整しながら債務の整理を行う。
調停が成立すると確定判決と同じ効力を有する調停調書が作成され、債務者は合意内容に従って債権者に弁済を続けることになる。

裁判所が関与しない手続

私的整理(任意整理)

裁判所等の第三者の介在を前提とせずに、債務者、債権者間の話合いによる任意の合意に基づいてなされる倒産処理手続

破産手続

メリット

  • 破産者が免責の許可を受けると債務の支払義務がなくなる ※
  • 弁護士から債権者に対する受任通知によって債権者による直接の取り立てが停止する(貸金業法21条1項9号)


税金、国民健康保険料、従業員の給与債権等の財団債権や、破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権などの非免責債権は、免責されません。

デメリット

  • 社会的信用が低下、失墜する
  • 財産を失う
  • 破産手続開始決定後、復権を得るまで、警備員や宅地建物取引主任者等の資格を喪失する

破産手続の流れ

同時廃止事件の場合
管轄の裁判所へ
自己破産の申立
破産手続開始決定
破産手続廃止決定
意見申述期間 免責許可決定

※横にスクロールします。

管財事件の場合
※事案に応じて流れが異なる場合もあります。
管轄の裁判所へ
自己破産の申立
破産開始決定 管財人の選任、調査 債権者集会 債権の確定、配当 破産手続終了 (免責の審尋)
行われない場合も多くあります
免責の決定

※横にスクロールします。

破産手続における破産管財事件と同時廃止事件

破産管財事件とは、裁判所から破産管財人が選任され、破産管財人が破産者の財産を換価処分して債権者に対する配当原資を確保する破産事件です(破産法31条1項)。同時廃止事件とは、破産手続開始時の破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのが不足すると認めるときに、破産手続開始の決定と同時に破産手続の廃止を決定する破産事件です(破産法216条1項)。

破産申立にかかる費用(京都地方裁判所の場合)

管財事件

○ 予納金・・・・・・最低20万5,000円
(追加費用)
○ 官報公告費用・・・法人1万4,786円 個人1万5,499円
○ 収入印紙代・・・・法人1,000円 個人1,500円
○ 郵券・・・・・・・債権者数に応じて決定

同時廃止事件

○ 予納金・・・・・1万1,859円
○ 収入印紙代・・・1,500円
○ 郵券・・・・・・債権者数に応じて決定

破産管財事件と同時廃止事件の振分け基準

申立があった事件につき、破産管財事件として処理するのか、あるいは同時廃止事件として処理するのかについては、裁判官が最終的に判断します。
もっとも、一定の類型の事件については、破産管財事件として処理されることが多いといわれています。

破産管財事件として処理されることが多いといわれる事件類型

個人事業者による破産申立

個人事業者については、財産や取引が事業と個人に明確に分類されていないなど、その実態を把握しにくいのが実情です。
そこで、破産管財事件として破産管財人が選任されることが多いといわれています。

破産者の資産の調査が必要な場合

破産者が破産に至る経緯や資産内容に不明な点がある場合も、その不明点を解明するため破産管財人が選任されることが多いようです。

破産者に偏波行為や財産減少行為がある場合

破産者の偏波行為や財産減少行為が疑われる場合も、否認権行使の要否を判断するために破産管財人が選任されることが多いようです。

法人の代表者・法人と同時に破産申立がなされる場合

中小企業の場合、法人の代表者の資産と法人の資産の混同が生じていることは珍しくないため、破産管財人による調査が必要となります。
また、法人代表者が先に破産すると法人の破産申立が困難になります。
したがって、法人の破産は、その代表者と一緒に申し立てることにより破産管財事件として処理されることが多いようです。

破産者に免責不許可事由があると認められる場合

そのままでは破産者が免責不許可となることが見込まれ、裁量免責を受けるためには破産管財人の免責不許可事由の調査及び破産者の生活状況の指導監督等が必要とされる場合も破産管財事件として処理されることが多いようです。

破産者に過払金があると認められる場合

破産者に過払金がある場合、過払金によって破産財団の形成が可能となるため、破産管財事件と処理されることが多いようです。
もっとも、過払金の額が僅少な場合は同時廃止事件として処理されることもあるようです。

※注意!
自己破産したら戸籍に載る、選挙権がなくなる、といったご質問をされることがよくありますが、いずれも事実ではありません。誤った情報のせいで自己破産をためらう方がいらっしゃいますが、正しい知識をもつためにも、まずは借金の専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。

免責不許可事由

免責とは

免責とは、個人の破産者に対して、破産手続で配当を受けられなかった残余の債務について、責任を免れさせる(債権者への支払いを免除する)制度です。

個人の破産者の場合、この免責を受けることによって、新たな生活のスタートを切ることができるのです。

どのような時に免責されなくなるのか

しかし、破産者が一定の行為を行うと、この免責を受けることができなくなります。

法定されている免責不許可事由には、次のようなものがあります。

(破産法252条1項各号)

1 破産者が意図的に破産債権者を害する行為

① 債権者を害する目的で行う不当な破産財団の減少行為

② 破産手続開始を遅らせる目的で行う不当な債務負担行為や不当な利益処分

③ 特定の債権者に対してだけ担保を提供したり弁済をしたりする行為

④ 浪費

⑤ 破産手続開始1年前から手続開始決定までの間に破産原因があることを知りながら行った信用取引

⑥ 財産状況に関する帳簿等を隠したり、変造したり、破棄する行為

⑦ 虚偽の債権者名簿を提出する行為

2 破産手続の義務を怠ること・手続の進行を妨害する行為

⑧ 裁判所が行う調査を拒んだり、虚偽の説明を行う行為

⑨ 不正な行為により破産管財人等の職務を妨害する行為

⑩ 破産手続上の義務に違反する行為

3 免責に関する事項

⑪ 前回の免責許可決定が確定した日から7年以内に申立があった場合

例えば、④浪費については、破産者の職業、収入、資産等に照らして社会通念上不相当の消費支出をいうとされています。

浪費の具体例としては、飲食、不要な高価品の購入、海外旅行、エステ、高価な布団の購入等などがあげられます。

以前、破産者の申立代理人をしたときに、破産者の「かつら」の購入が浪費として指摘されたことがありました。

このように、何が浪費に当たるのかについては、個別具体的に判断されます。

裁量免責

一方で、破産者が免責不許可事由に当たる行為をしていても、破産手続開始に至る経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認められると、裁判所は免責を許可することができます(裁量免責)。

したがって、免責不許可事由に当たる行為がある場合も、裁量免責が可能かどうか、まずは弁護士にご相談することをおすすめします。

破産手続開始原因

破産手続は、債務者の財産状況が悪化し、裁判所が債務者の総財産をもって債権者に公平かつ平等な弁済を図るべきと認めた場合に開始されます。

破産法では、自然人・法人に共通する破産手続開始原因として「支払不能」を挙げ(破産法15条1項)、支払不能を推定する事実として「支払停止」を挙げています(同条2項)。

また、存立中の合名および合資会社を除く法人については、「債務超過」も破産手続開始原因に挙げられています(破産法16条)。

他方、経済活動を行うことが前提とされていない相続財産にかかる破産では、「債務超過」が唯一の破産手続開始原因とされています(破産法223条)。

支払不能

支払不能とは、債務者が支払能力を欠くためにその債務のうち弁済期にあるものについて一般的かつ継続的に弁済することができない状態をさします(破産法2条11項)。

支払能力を欠く状態

支払能力は財産、信用、労力ないし技能をその要素とします。
この要素のいずれによっても債務を弁済する能力がない場合、支払能力を欠くことになります。

したがって、財産があっても当該財産が換価できなければ支払能力を欠いた状態といえます。
他方、財産が無い場合も信用や労力によって金銭が調達できれば支払能力を欠いた状態とは評価されません。

即時に弁済すべき債務を弁済できないこと

即時に弁済すべき債務を弁済できないとは、既に履行期が到来している債務を弁済できない状態をいいます。
したがって、将来履行期が到来する債務が弁済できないことが明らかであっても未だ支払不能にあたらないことになります。

また、債務者が相殺・時効の援用・混同等、正当な理由に基づいて支払いを拒絶している場合も支払不能にはあたりません。

一般的かつ継続的に弁済することができない状態

一般的とは、総債務の弁済について債務者の資力が不足していることを指します。
したがって、特定の債務の弁済ができなくても、それが全体的資力不足によるものと判断されなければ支払不能にはあたりません。

かつ、一時的でなく継続的に弁済できない状態であることが必要です。

支払停止

支払停止とは、支払利不能であることを明示的又は黙示的に外部に表明する債務者の主観的な態度を指します。

支払停止自体は破産手続開始原因ではありませんが、支払不能を推定させます(破産法15条2項)。

自然人の場合は、弁護士が債務者の代理人として、債権者に対して、今後破産手続をとることを理由として弁済を停止する旨の通知を行うことが支払停止にあたります。

法人の場合は、営業の廃止(閉店等)、手形が6か月以内に2回手形交換所で不渡りとなって銀行取引停止処分となった場合等が支払停止にあたります。

債務超過

債務超過とは、債務額の総計が資産額の総計を超過している状態をいいます。

債務超過の判断には信用・労力・技能などは斟酌されず、弁済期未到来の債務も債務額に含まれます。

法人や法人代表者の同時廃止処理の可否

破産管財事件と同時廃止事件

破産管財事件とは、裁判所から破産管財人が選任され、破産管財人が破産者の財産を換価処分して債権者に対する配当原資を確保する事件のことです。
(破産法31条1項)

一方、同時廃止事件とは、破産手続開始時の破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認められるときに、破産手続開始と同時に破産手続の廃止を決定する事件のことです。
(破産法216条1項)

破産管財事件では、管財人の報酬を申立人が裁判所に予納する必要があるため、京都地方裁判所に申し立てた場合は、予納金は最低でも20万5,000円必要となります。
一方で同時廃止事件の場合、裁判所への予納金は1万1,859円となります。

裁判所への破産申立の場合、その他にも官報公告費用や収入印紙代、弁護士に手続を依頼する場合は弁護士費用等も必要となります。

法人や法人代表者の同時廃止処理の可否

以上のとおり破産管財事件は、同時廃止事件に比べて破産申立人が準備する予納金が多額となります。
そこで、法人やその代表者が破産申立をする場合に同時廃止処理ができないか、あるいは法人の破産申立を先送りにして、代表者だけ同時廃止処理ができないか、といった相談が寄せられます。

確かに法人が事業を停止して相当期間経過しているといった場合、法人に財産がないことが明らかで、その結果、法人の破産申立の際の予納金が準備できない、といったケースは想定されます。
しかし、一般論ですが、裁判所は、法人の同時廃止処理や法人代表者だけの同時廃止処理には消極的だと思われます。

その理由として、

法人が事業を停止した時点では一定程度財産を保有していたと考えられること

仮にその後に財産を処分した場合も、その処分の過程に問題がなかったかについては破産管財人による調査が必要なこと
が挙げられるようです。

また、法人代表者が先に破産手続開始決定を受けてしまうと、取締役の委任契約が終了するため(民法653条2号)、法人の法定清算が困難となってしまいます。

そこで、法人とその代表者が破産申立を行う場合は、両者が同時に破産管財事件として申立てることになります。

破産申立が遅れた場合に生じる問題

破産法は、破産手続の開始原因として、債務者の「支払不能」(破産法15条1項)、法人の場合の「支払不能又は債務超過」(同16条1項)を規定しています。

それでは、支払不能や債務超過の状態にあるにもかかわらず長期間にわたり破産申立をせず、破産申し立てをした場合、どのような問題が生じるのでしょうか。

破産財団を構成する財産の減少・財産の隠匿・財産の廉価処分

破産申立が遅延することによって、将来、破産財団を構成することになる債務者の財産が減少することが考えられます。

また、債務者が財産を隠匿したり、あるいは目先の現金を確保するために廉価で処分するといった問題も生じます。

なお、「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為」や、「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少」させる行為は、いずれも免責不許可事由とされています。
(破産法252条1項1号・4号)

給料債権の不当な減少

債務者が従業員を使って事業を行っていた場合、その従業員の給料債権については、「破産手続開始前3か月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする」とされています。
(破産法149条1項)

従業員への給料が未払いのまま債務者が事業を継続し、その後破産をすると、従業員の給料債権は「破産手続開始前3か月」分だけ財団債権として保護され、ぞれ以前の給料債権は財団債権として保護されなくなってしまいます。

労働債権の立替払制度が利用できない

労働者健康福祉機構による未払賃金の立替払制度が利用できる労働者は、破産申立の前6か月前の日から2年以内に会社を退職した人です。
(賃金の支払の確保等に関する法律7条・同法施行令3条1項)。

したがって、労働者が会社から解雇された日から、破産申立までに6か月が経過すると、未払賃金の立替払制度が利用できなくなります。

帳簿類・債務者の財産などの散逸

債務超過に陥っている債務者が事業を継続する場合、目先の資金繰り等に手間を取られる結果として、帳簿類などが散逸、紛失する可能性があります。
また従業員が引き継ぎなく退職すると、会社の財産や売掛債権の管理ができなくなったりします。

その結果、破産財団を構成するはずであった債務者の財産が散逸、紛失ことになります。
なお、「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと」は免責不許可事由とされています。
(破産法252条1項6号)。

以上のとおり、債務超過等にある債務者が破産申立までに時間を要すると様々な問題が生じえます。
もちろん、債務超過の状況にあっても経緯者の努力によって業績が持ち直し、破産を免れることも多々あります。

いずれにせよ、事業継続の是非を判断するため、経営者の方が時に外部の専門家等の意見を聴取することも有用であると思われます。

破産手続開始決定後の事業継続

個人事業者が破産手続開始決定後に事業を継続するケースとしては、
① 破産管財人が裁判所の許可を受けて事業を継続するケース(破産法36条)
② 個人事業主自身が事業を継続するケース
が考えられます。

もっとも、①破産管財人が事業を継続する場合、事業継続により損失が生じた場合、当該損失は破産財団が負担することになります。

したがって、①破産管財人が事業を継続するケースとは、当該事業を継続しなければ多額の違約金が生じてしまうなど、限定的な事案に限られます。

個人事業主自身が事業を継続する場合の問題点

個人事業主が破産手続開始決定後に事業を継続する場合には、次のような問題が生じます。

事業用財産の破産財団帰属性の判断

破産者が、自由財産(本来的自由財産)を事業用資産として事業を継続することは問題ありません。

しかし、本来的自由財産中、差押禁止財産(破産法34条3項2号・民事執行法131条)については、事業用資産がこれに該当するのか、直ちに判断することは容易ではありません。

事業資産が「その業務に欠くことができない器具その他の物」(民事執行法131条6号)にあたるか否かは、個人事業主の事業の性質や当該動産がどのように事業に用いられているのか等を総合的に判断する必要があるためです。

破産者が利用を希望する事業資産が、差押禁止動産に該当しない場合は、当該事業資産を利用した事業継続は困難となります。

事業資産を売却・賃貸する場合の評価

破産者が、破産財団に属する事業資産を売却・賃貸を受けて事業を継続したい等の希望がある場合、破産管財人は、破産者が提示する売却・仮受価額より高額の条件を提示する希望者の有無を確認する必要があります。

したがって、破産者から買受・仮受の希望が出されても、破産管財人は、他の買受・仮受希望者の有無を確認する必要があるため、直ちに売却等を受けることは困難となります。

また、破産者が仮受けた事業資産が毀損した場合、破産者はもちろん、破産管財人の責任ともなるため、破産者による事業資産の仮受けは、より慎重に判断されることになります。

営業権の評価

個人事業主が破産手続開始決定後に営業を継続する場合、その無形の財産的価値を有する事実関係である営業権は破産財団に帰属します。

営業権の評価についてはDCF法をはじめ、様々な評価方法がありますが、いずれにせよ破産管財人は、破産者より高い評価をする買受希望者がいる場合、当該買受希望者に営業権を売却することになるため、個人事業主が事業を継続することは困難となります。

賃貸借契約の継続

破産者が賃貸物件を利用して事業をしている場合、当該賃貸物件の賃料は、破産手続開始決定後は財団債権となります(破産法147条1項7号)。

破産者からこの賃料相当額について、破産財団に組み入れるとの申し出がある場合がありますが、破産者が継続的に賃料相当の金員の組み入れができるのか、破産管財人において相当慎重に判断されることになります。

破産手続開始破産決定後に事業を継続したい場合は

個人事業主が破産手続開始決定後の事業の継続を希望する場合も、上記で述べた様々な問題が生じます。

破産手続開始決定後にこうした問題に対処しようとしても、破産管財人の理解を得られず、けっきょく事業を廃止せざるを得ない場合も生じます。

したがって、破産手続開始決定後に事業継続を希望する個人事業主は、予め申立弁護士とともに、裁判所や破産管財人候補者と十分な協議を行い、破産申し立てを行う必要があります。

勤務先が破産した場合の従業員の給料

勤務先が破産したときの従業員の給料の取扱い

破産法では、破産手続開始決定前に発生している未払給料は、破産手続開始前3か月分のものは財団債権となり、それ以外の給料は優先的破産債権の取扱いを受けることになります。
財団債権とは、最優先で返済を受けることができる債権で、配当を待つ必要がなく、破産者の財産から随時返済を受けることができるものです。

優先的破産債権とは、財団債権には劣後しますが、他の一般破産債権よりは優先的な取扱いを受けることができる債権です。
未払給料のうち財団債権にならないもの他、民法306条が規定する一般先取特権などが優先的破産債権になります。

ここで「給料」とは、退職金を除く、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、会社が従業員に労働の対価として支払う全てのものが含まれます。

会社が破産したときの従業員の退職金の取扱い

破産法では、退職前3か月分の給料の総額に相当する額が財団債権となり(その額が破産手続開始前3か月分の給料の総額より少ない場合は、破産手続開始前3か月の給料の総額)、それ以外の部分で「雇用関係に基づいて生じた債権」に該当する部分は優先的破産債権となります。

破産法上、退職金として保護されるためには、支払基準が就業規則等によって明確に定められ、給料の後払い的性格を有することが必要とされています。

したがって、そもそも就業規則等に退職金支給に関する規定がない場合は、破産法においても退職金が保護されることはありません。

会社に給料や退職金を支払う資力がない場合

会社に資力が残っていない場合は、独立行政法人労働者健康福祉機構による未払賃金立替制度の活用を検討することになります。

従業員の未払給料の立替払いを行った機構は、従業員の給料債権を代位取得し、財団債権として破産財団から弁済を受けることになります。

強制執行した債務者が破産した場合

破産債権・財団債権に基づく破産財団所属財産に対する強制執行の禁止・失効

破産手続の開始決定があった場合、破産債権に基づく破産財団に属する財産に対する強制執行(仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行等)は禁止されます。
(破産法42条1項)

既になされていた破産債権に基づく破産財団に属する財産に対する強制執行(仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行等)は、「破産財団に対しては」効力を失います。
(同条2項)

また、財団債権に基づく破産財産に属する財産に対する強制執行についても、同様に禁止・失効することになります。

強制執行の相対的無効

破産財団に属する財産に対する強制執行は「破産財団に対しては」効力を失います。

したがって、破産管財人は、既に破産財団に属する不動産に不動産強制競売の開始決定による差押登記がなされていたとしても、差押登記がないものとして不動産を換価することができます。

国税滞納処分と破産手続開始決定の関係

国税滞納処分とは、国税債権の強制的な実現を図るために、滞納者の財産を差し押さえ、これを公売することにより未納税額に充当する行政処分です。
破産手続開始決定があった場合は、破産財団に属する財産に対する国税滞納処分は禁止されます。
(破産法43条1項)

一方、破産手続開始決定前に、破産財団に属する財産に対して国税滞納処分がなされていた場合は、当該滞納処分の続行は妨げられません。
(同条2項)
国税の徴収権者(国)は、実体法上、自ら強制処分等を行うことができる自力執行権や、優先徴収権を有しているためです。

破産手続開始決定前に強制執行が終了している場合

破産手続開始決定前に、既に強制執行が終了している場合は、強制執行は破産手続開始決定の影響を受けず、遡って強制執行の効力が失効することもありません。
破産手続開始決定前に差押債権者による取り立て、強制競売による配当が行わていた場合、破産管財人は取り立てや配当に係る金員の返還を求めることはできません。

もっとも、破産管財人の否認権は、「その行為が執行行為に基づくものであるときでも、行使することを妨げない」とされているため、強制執行も対象となります。
(破産法165条)

破産手続中に債務者(破産者)が死亡した場合

破産手続開始決定前に債務者が死亡した場合

破産手続開始の申立後、破産手続開始決定前に債務者が死亡した場合、破産手続は中断します。
この場合、申立のあった裁判所は、「相続債権者、受遺者、相続人、相続財産の管理人又は遺言施行者」の申立によって、その相続財産について、破産手続を続行する旨の決定をすることができます。
(破産法226条1項)
なお、破産手続続行の申立は、相続開始後1か月以内に行う必要があります。
(同条2項)
上記期間内に破産手続続行の申立がない場合、申立があっても当該申立が却下された場合は、破産手続は終了することになります。
(同条3項)

破産手続開始決定後に破産者が死亡した場合

破産手続開始決定後に破産者が死亡した場合は、破産者の相続財産の破産手続として、当然に続行されます。
(破産法227条)

相続財産の破産手続で弁済を受けることができなかった相続債権

相続財産の破産申立があった場合も、その申立には限定承認(民法922条)の効力が伴わないとされています。
(大阪高判昭和63年7月29日判タ680号206頁)
また、相続人による免責の申立については、免責の制度は債務を負った自然人について規定されたものであり、相続人には適用されていないと考えられています。
そこで相続人が保護されるためには、相続人が相続放棄等の手続をとる必要があります。

破産宣告による資格制限

破産宣告がなされた場合、法令等により破産者には様々な資格制限が生じます。

破産者に制限される資格には次のようなものがあります。

(資格制限は破産者の免責が確定すれば(復権する)なくなります)

士業関係

〇行政書士(行政書士法5条)
〇公認会計士・公認会計士補(公認会計士法4条)
〇司法修習生(司法修習生に関する規則17条)
〇司法書士(司法書士法4条)
〇社会保険労務士(社会保険労務士法5条)
〇税理士(税理士法4条)
〇通関士(通関業法31条)
〇土地家屋調査士(土地家屋調査士法4条)
〇外国法事務弁護士(日本弁護士連合会、外国法事務弁護士記章規則6条)
〇不動産鑑定士・不動産鑑定士補(不動産の鑑定評価に関する法律16条)
〇弁護士(弁護士法6条)
〇弁理士(弁理士法5条)
〇宅地建物取引主任者(宅地建物取引業法18条)

特定の職種・業種

〇簡易郵便局長(簡易郵便法3条の2)
〇卸売業者(卸売市場法17条)
〇持分会社の社員(会社法607条1項5号)
〇割賦購入あっせん業者(割賦販売法33条)
〇貸金業者(貸金業法6条)
〇外国証券業者(外国証券業者に関する法律5条)
〇金融商品取引業者(金融商品取引法29条の4第1項2号ロ、3号 登録拒否)
〇調教師又は騎手(競馬法執行規則3条)
〇検察審査員(検察審査法5条)
〇警備業者(警備業法3条)警備員(同7条)警備員指導教育責任者(同11条の3)
〇建築士事務所開設者(建築士法23条の4)
〇一般建設業・特定建設業(建設業法8条、17条)
〇人事官(国家公務員法5条、8条)
〇公証人(公証人法14条)
〇受託者(信託法5条)
〇質屋(質屋営業法3条)
〇会議所会員(商工会議所法15条)
〇商品投資販売業・商品投資顧問業(商品投資に係る事業の規則に関する法律6条、32条)
〇信用金庫等の役員(信用金庫法17条)
〇商工会の役員(商工会法32条)
〇宅地建物取引業(宅地建物取引業法5条)
〇通関業(通関業法6条)
〇陪審員(陪審法13条)
〇一般廃棄物処理業者・産業廃棄物処理業者・特別管理産業廃棄物処理業者(廃棄物の処理及び清掃に関する法律7条、14条、14条の2)
〇風俗業を営もうとする者・風俗営業の営業管理者(風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律4条、24条)
〇不動産鑑定業(不動産の鑑定評価に関する法律25条)
〇株式会社たる保険業の取締役・監査役(保険業法15条の3)
〇相互会社たる保険業の取締役・監査役(保険業法60条、62条)
〇生命保険募集人及び損害保険代理店(保険業法279条)
〇旅行業者(旅行業法6条)
〇旅行業務取扱主任者(旅行業法11条の3)
 

 

個人再生

定期収入のある債務者が、裁判所が認可した再生計画案にしたがい、債務者に一定金額を支払うことで残額を免除してもらう制度です。

メリット

  • 債務が大幅にカットされる(100万円または債務総額の5分の1)
  • 自宅や自動車を残すことができる
  • 手続き開始後、債権者から差押え等をうけることがない

デメリット

  • 手続きが煩雑で時間がかかる
  • 官報に公告される

個人再生の流れ

管轄の裁判所へ
再生手続の申立
再生手続の開始決定
(これにより債権者の請求はストップ)
債権額の確定 再生計画案の
作成・提出
債権者の意見聴取
または、書面による決議
再生計画案の
認可決定
弁済開始

※横にスクロールします。

小規模個人再生

要件

再生手続の開始原因があること

将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある個人債務者であること

無担保債権の総額が5000万円を超えないこと

再生手続開始の申立の際、小規模個人再生を行うことを求める旨の申述があること(

効果

その収入を弁済原資として、再生債権を原則3年(最長で5年)で分割弁済することを内容とする再生計画案を作成し、裁判所の許可を得てこれを履行すれば残債務が免除されます。

給与所得者等再生

要件

小規模個人再生の要件を満たしていること

給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれること

再生債務者の収入・家族構成等を基礎に、再生債務者の可処分所得を算出し、その2年分以上の額を弁済に充てること

再生手続開始の申立の際、給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述があること

効果

再生計画の成立に通常必要な再生債権者の決議を省略できる。

小規模個人再生と給与所得者等再生の選択基準

再生債務者の最低弁済額を比較した場合、小規模個人再生の方が給与所得者等再生よりも低くなります。
例えば、再生債権額が3,000万円を超える場合、小規模個人再生では10分の1まで債務をカットできます。
一方、小規模個人再生での弁済額は可処分所得の2年以上、かつ、小規模個人再生を利用した場合より高くなければなりません。

一方、給与所得者等再生では再生計画の認可に再生債権者の消極的同意は不要です。したがって、再生債権者から異議が出されることが予想されるケース(個人の債権者など)では、小規模個人再生に比べて弁済額は多くなりますが、給与所得者等再生を選択することになります。

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)

民事再生法196条3号が定める住宅資金貸付債権について、再生計画に弁済期限の繰延等を内容とする住宅資金特別条項を定めた場合、再生計画の効力は住宅やその敷地に設定されている抵当権に及び、再生債務者が再生計画に基づく弁済を継続している限り、住宅等に設定されている抵当権の実行が回避できるというものです。

個人再生手続における再生債務者の最低弁済額

個人再生手続において、再生債務者が裁判所から認可された再生計画に基づき弁済する総額(計画弁済総額)は、次の要件を満たしている必要があります。

① 最低弁済額以上であること
② 破産をした場合における配当額を超えていること(清算価値保障原則)
③ (給与所得者等再生の場合)可処分所得の2年分以上であること

最低弁済額

最低弁済額は,「無異議債権の額及び評価済債権の額の総額」と「基準債権」の総額で決まります。

無異議債権の額、評価済債権の額の総額3,000万円以下の場合の最低弁済額
→基準債権額による。

基準債権額 最低弁済額
100万円未満 その基準債権額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1,500万円未満 基準債権額の1/5
1,500万円以上 300万円

無異議債権の額及び評価済債権額の総額3,000万円超5,000万円以下の場合の最低弁済額
→無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の10分の1

民事再生手続

メリット

  • 会社経営者が退職する必要がない(経営を継続できる)
  • 弁済期限を最長で10年に延ばすことができる
  • 再生計画の中で担保権の付いていない債権をカットできる(最低弁済額等の制限はないが、再生計画の認可には債権者の過半数又は債権総額の2分の1以上を有する債権者の同意が必要)

デメリット

 

  • 企業の信用が毀損する
  • 債務免除による債務免除益課税が生じる
  • 破産手続による清算配当見込額を上回る弁済をすることが求められる
  • 一般的に破産手続に比べて弁護士費用が高額となる

民事再生手続のながれ

 
再生手続開始の申立 再生手続開始決定 再生債権の届出、調査、確定 再生債務者の財産調査 再生計画案の提出、決議、認可 再生計画の遂行 再生手続の終結

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① 再生手続開始の申立

1.債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき、又は2.債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときに再生手続開始の申立ができます(民事再生法21条1項)

② 再生手続開始決定

裁判所による開始決定後、再生債権者は原則として再生計画によらなければ弁済を受けられません。

③ 再生債権の届出、調査、確定

④ 再生債務者の財産調査

⑤ 再生計画案の提出、決議、認可

再生債務者等は再生計画案を作成して裁判所に提出します。
裁判所は、再生計画案が可決され、不認可事由が認められないときは、認可決定をします。
認可決定が確定すると、再生計画の定めにない再生債権は原則として失権し、再生計画に定めのある再生債権は、計画の定めのとおりに権利変更されることになります。

⑥ 再生計画の遂行

⑦ 再生手続の終結

どの手続きを選択すべきかはさまざまな要素を考慮する必要があるため慎重に判断しなければなりません。
借金でお悩みの方は、まずはお気軽にオールワン法律会計事務所の弁護士にご相談ください。新たな人生へ一歩踏み出すお手伝いをさせていただきます。

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