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生前贈与財産の検討〈京都弁護士会弁護士・税理士による相続税の法律相談〉

 

相続税対策としての生前贈与の際にどのような財産を贈与すべきかについて弁護士法人オールワン法律会計事務所(京都弁護士会)の弁護士(京都弁護士会)税理士(近畿税理士会下京支部)が解説します。

 

1 生前贈与する財産の検討

 

相続税対策として生前贈与を検討する場合、どのような財産を贈与するのが有効的でしょうか。

 

「不動産」「自社株式」「現預金」について、生前贈与に適した財産かどうかを検討してみたいと思います。

 

2 不動産

 

1) 不動産贈与に対するニーズ

 

日本で代々続く資産家の資産で大きな割合を占めるが不動産です。

 

先代から引き継いだ、または自ら稼得した金融資産は代替わりの時の相続税に消え、残っているのが不動産というケースです。

 

金融資産が手元にあまりなく、多数・多額の不動産を保有する資産家にとっては、不動産を生前贈与する潜在的なニーズがあります。

 

2) 不動産を生前贈与する際の問題点

 

ア)贈与税の問題

 

都市部やその近郊の不動産は、それが一筆の土地であれ1個の建物であれ、個々の資産価値が大きなものとなります。

 

こうした価値の大きな資産を暦年贈与で贈与しようとすると、贈与税の負担が過重となります。

 

現行の贈与税制では、仮に基礎控除後5,000万円(固定資産税評価額)の不動産を贈与する場合、贈与税として2,350万円(5,000万円×55%-400万円)、20歳以上の方が直系尊属から贈与を受けた場合も1,835万円(5,000万円×55%-640万円)課税されます。

 

イ)贈与期間の問題

 

共有持分を少しずつ贈与する場合はどうでしょうか。

 

仮に、毎年100万円相当の持分を贈与すれば、贈与税の基礎控除の範囲内に収まるため、贈与税の負担は必要ありません。

 

しかし、このような細分化した持分を贈与するスキームは長期間必要となるため現実困難です。

 

上の事例では、贈与完了まで50年もの年月が必要となります(5,000万円÷100万円)。

 

ウ)移転コストの問題

 

細分化した持分を贈与する場合には、移転コストの問題も生じえます。

 

不動産の所有権の移転は、それを第三者に対抗する必要があるため、登記名義を移転する必要があります(民法第177条)。

 

移転登記手続きは、贈与者や受贈者が自らできない場合、普通は司法書士等の専門家に依頼することになります。

 

持分を贈与する度に司法書士報酬が必要となり、移転コストを押し上げることになります。

 

エ) まとめ

 

このように、不動産は、そのニーズに反して、移転コストを抑えながら効率的に贈与することは一般的に困難です。

 

そこで、一定規模以上の不動産を贈与する場合には、相続時精算課税を活用することを検討したり、資産管理会社といった法人を活用したスキームを検討する必要があります。

 

不動産の贈与にはこうした法律や税務の知識が必要となりますので、弁護士、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。

 

2 自社株式(非上場株式)

 

1)自社株式贈与に対するニーズ

 

中小企業のオーナーが事業を承継する場合、オーナーが保有する当該企業の議決権付株式を、当該承継者に承継する必要があります。

 

会社の経営方針を決定するのは究極的には株主であり、現企業オーナーが会社の経営権を後継者に承継するには、株主としての地位、すなわち議決権の付いた株式を承継する必要があります。

 

株式の承継方法は、後継者が親族以外の第三者の場合、一般的には売買によることになります。

 

後継者が企業オーナーの親族の場合、株式の承継方法には、売買に加えて、贈与及び相続が加わります。

 

業績が好調な企業の株式は評価が高くなるため、売買で後継者に移転するには後継者が多額の株式買取資金を準備する必要があります。

 

また、株式譲渡には申告分離方式の譲渡所得税・復興特別所得税・地方税が合算で20.315%課税されるため、譲渡側の企業オーナーの税負担も過重なものとなる場合があります。

 

 次に他方、遺言により企業オーナーの相続財産として株式を譲渡することも可能ですが、相続が何時発生するのか分からない以上、株価の評価が高い時点で相続が発生すると、後継者をはじめとする相続人の相続税の負担が過重となる可能性があります。

 

そこで、株価の評価が低い時点で(必要に応じて株価対策を行って)、株式を後継者に贈与することを検討する必要がでてくるのです。

 

2) 自社株式贈与の問題点

 

ア)特別受益

 

遺産分割における特別受益・寄与分・遺留分で述べたとおり、被相続人が生前、複数の推定相続人中、特定の推定相続人にだけ生前贈与をしていた場合、相続開始後、生前贈与を受けられなかった相続人から、生前贈与を受けていた相続人に対して、特別受益の主張がなされる可能性があります(民法第903条)。

 

→ 遺産分割における特別受益・寄与分・遺留分

 

企業オーナーに子が複数いる場合でも、自社株を贈与する相手は通常は後継者である特定の子だけになります。

 

すると、企業オーナーに相続が発生した後、自社株又は自社株に見合うような財産の贈与を受けていない子から、後継者に対して、特別受益の主張がなされる等、遺産分割協議が紛糾する可能性があるのです。

 

イ)税負担

 

現行の贈与税では、暦年(1月1日から12月31日迄)中、受贈者1人あたり110万円の基礎控除枠が設けられています。

 

しかし、株価の評価が高い中小企業では、贈与税の基礎控除枠で移転できる株式数は限定的です。

 

現行の暦年課税の下、仮に1年で1,200万円相当の自社株を、20歳以上の直系卑属である後継者に移転しようとすると、納税額246万円※1となります。

 

この場合、実質税率が20.5%※2となるため、これ以上の金額を贈与すれば長期譲渡所得の税率20.315%を超過し課税上不利になります。※3

 

※1 20歳以上の直系卑属に対する贈与税額

 

(1,200万円ー110万円[基礎控除])×40%-190万円=246万円

 

※2 246万円/1,200万円

 

※3 実際の譲渡所得税は売却代金から取得費・譲渡費用を控除した金額に課税されるため、上記の比較はあくまで概算です。

 

他方、相続時精算課税を活用した自社株贈与のスキームにも問題点があります。

 

たしかに、今後株価の上昇が見込まれる中小企業において、相続時精算課税によって後継者に自社株を贈与することで、企業オーナーの相続発生時に相続財産に加算される自社株の評価額を贈与時の価額に固定することができます。

 

しかしながら、当該スキームのメリットは、贈与時から自社株の評価額が上昇することによって得られるものです。

 

反対に、贈与時から自社株の評価額が下降した場合には、相続人の相続税の負担が過重となりえます。

 

さらに、いったん相続時精算課税を利用すると、暦年課税で活用することのできた年間110万円の基礎控除枠を再度利用することができません。

 

ウ) まとめ

 

企業オーナーから後継者に対する自社株の生前贈与は、根強いニーズがありますが、方法を間違えてしまうと、企業オーナーの相続時に思わぬもめ事の種になり得たり、後継者をはじめとする相続人の税負担が過重となるといったリスクがあります。

 

もちろん、どのような場合にもリスクがない事業承継における完全な自社株承継のスキームはありません。

 

どのスキームにも一長一短があります。

 

そこで、企業オーナーが、自らが採用している(する)スキームのリスクをどの程度把握しているのかが重要となります。

 

リスクを把握しておけば、そのリスクが顕在化したときに対処することも可能ですが、リスクすら把握していなければ対策が後手に回りかねません。

 

そこで、自社株の移転スキームの選択にあたっては、これから検討する場合はもちろん、すでにいずれかのスキームを採用している場合も、今一度弁護士や税理士等の専門家に相談することをお勧めします。

 

3 現預金

 

現預金ですから、贈与者が贈与額を自由に設定することができます。

 

贈与者と受贈者が同一金融機関の同一支店に口座を有する場合、贈与資金の振替手数料を0とすることも可能です。

 

自社株と異なり、贈与する相手に制約はありません。

 

現預金は、贈与が容易でかつ移転コストの負担が最少となる財産です。

 

ただし、受贈者の名義だけの預金とならないようご注意ください。

 

相続税の税務調査

 

【ご留意ください!】

 

本解説は、相続税対策としての生前贈与の基本的な考え方を示すものです。具体的な相続税対策の立案や実行にあたっては、弁護士、税理士等の専門家にご相談下さい。

 

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